第29話 今まで




ノアくんとレアちゃん、シルビアは気を使ってくれたようだ。

少し離れたところで3人で話している。

私と蒼から離れ、二人きりにしてくれた。


「あのね、蒼。

改めて魔法のこと本当にごめんね。」


まずは心からの謝罪。


「大丈夫、いつも詩織が僕を見つけてくれたから。」


そう言って目の前の蒼は笑ってくれた。


「本当にそう思ってる?

私が蒼に魔法を掛けたから迷子になるって知った今でも?

私、蒼の本当の気持ちが知りたいの。」


迷惑だと思った、私を嫌いになった。

そんな言葉が出来ても受け止めるつもりだ。

私はそれを受け止めなければいけない。

私は本当の蒼が知りたい。


「自分が魔法を掛けたってわかってたのに、私は蒼に何も言わなかった。

嫌われるのが怖くて言えなかった。

こんな最低な私を蒼に知られたくなかった。

だから今まで、ずっと、隠していたの、本当にごめんなさい。

謝って済むことじゃないってわかってる、自己満足だってわかってる。

だけど、ごめんなさいとしか言えなくて、、、。」


思いっきり頭を下げて謝罪する。

下を向いているから、余計に涙が出そうになる。

泣くな、私は加害者だ。

泣く権利なんてない。

私よりもずっと泣きたいのは蒼の方だ。


「詩織、頭を上げて。」


蒼の声に頭を上げる。

蒼はまっすぐに私を見ていた。


「詩織は自分を責めているのかもしれないけれど。

詩織の魔法で僕が迷子になっていたって知った時、僕はホッとしたよ。」


予想外の言葉に何も言えない。


「ずっと僕が迷子になるせいで詩織に迷惑を掛けてると思ってた。

僕のせいで詩織が普通の生活が送れないんだって。

でも本当は魔法が掛かっていて、誰のせいでもなくてホッとしたよ。

だから、本当に大丈夫なんだよ。」


ああ、この人は本当にどこまで優しいのだろう。


「私のせいだよ!

なのに私ずっと黙ってんだよ!

子どもの頃から魔法のこと知ってたのにずっと!

蒼は怒っていいんだよ!」


私の言葉に蒼は少し考えているようだった。


「うーん、もし魔法が掛かってるって言われても信じられなかった気がするな。

詩織は優しいからそんは嘘までついて、気を使ってくれてるんだなって思ったかも。

ドロシーが実際に魔法を見せてくれたから、今は信じられてるけど。

まあ、どっちにしろ怒ったりはしないと思うけどね。」


「なんで!!??

なんで私に怒らないの?」


誰のせいでもない訳がない、この状況になってるのは完全に私のせいだ。


「だって詩織わざと魔法を掛けた訳じゃないんだよね?

悪意があったわけじゃないんだよね?

それに、詩織はずっと僕を探しに来てくれた。

ひとりぼっちの僕を、詩織がいつも探してくれた。

見つけれてくれた、一緒に居てくれた。

それが魔法のせいだったとしても、僕は嬉しかったよ。

詩織と居られるのが楽しかった。」


蒼はそう言って笑ってくれた。


「私のこと嫌いになってない?」


多分、これが私が一番聞きたかったこと。


「なるわけないじゃないか。

変な詩織。」


蒼がクスクス笑っていた。

久々に蒼の笑い声を聞いた気がする。

私も釣られて笑顔になる。


「詩織、やっと笑ってくれた。よかった。

もう自分を責めたりしないでね。」


「ありがとう、蒼!」


私はもう大丈夫。

最後の試練も合格して、蒼に掛けてしまった魔法を絶対に解く!!!



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