第25話 迷路


迷路の中は日光が反射して見渡す限りキラキラと光っていた。

そしてどこを向いても自分が居た。

妖精たちが真似ている私なのか、鏡に映った私なのか区別が出来ない。

入り口も鏡で塞がれ、どちらに進めばいいのかわからない。


「これ万能じゃないらしいけど、、、。」


私は左手を迷路の壁にペタリと着けた。

子どもの頃に行った遊園地の迷路で、パパが教えてくれた脱出方法だ。

左手を壁に着けたまま一歩ずつ進む。

ジャリ、ジャリ、と砂の上を歩く私の足跡だけが迷路に響いていた。



「あー、もっと痩せたい!

お腹を引っ込めたいんだよねー!」


5分ほど歩いていると、突然私の声が迷路の中に響いた。

自分が話したのかと重い、思わず右手で口を塞いだ。

辺りを見渡すと、後方の鏡の中の私が一人だけ下着姿だった。


「いやぁぁぁぁあああ!!!

やめてよ!!!」


自分の下着姿が恥ずかしく、顔は熱くなり、叫んでしまう。


「うーん、二の腕も気になるなあ。」


下着姿の私が二の腕をプニプニと摘んでいた。


「そんなこと気にしなくていいから、服を着てないことを気にして!!!」


叫んでも下着姿は変わらず、二の腕やお腹をプニプニと摘むことをやめない私。

もしかして本当の私って、これ?これなの?と思い始めて来た。


「違う、絶対違う!

深層心理の私はそんなんじゃないから!」


下着姿の自分を無視して、先に進むことにした。

その場から早く離れたくて足がどんどん進む。



「蒼へ、、、。」


またも自分の声が響き、辺りを見回す。

今度は机に向かう私がすぐ右隣に居た。

手元には便箋、手にはボールペンが握られていた。


「蒼のことが大好きです!」


鏡の自分は便箋に蒼への愛の告白をスラスラと書いていた。

何行も、何行も。


「いやいやいやいや!?私と蒼はそうゆうのじゃないの!!

私じゃ蒼に全然釣り合ってないから!!!」


先程自分の下着姿を見させられた時よりも顔が熱い。

火が出てしまいそう!



「奥田くん大好き!

奥田くんを独り占め出来て嬉しい!」


今度は左隣に子供が現れる。

背が低くて、ランドセルを背負っている。

小学生だった時の私だ。


「これからずっと奥田くんを見つけられるのは私だけ!嬉しい!」


手を広げた私が、無邪気な笑顔でその場でクルクルと回る。

ワンピースの裾がフワッと広がった。


「そんなこと、、、そんなこと思ってない!

全然嬉しくない!」


顔の熱が蒸発して頭に登ったみたい。

私の頭の中はモヤモヤでいっぱい。

水蒸気は胸にまで降りて来て、心臓が蒸気機関車のようにバクバクと走り出す。



「魔法なんて知らない!

私悪くないもん!」


「ママが魔法使いだったのが悪いんじゃん!」


「私のせいで蒼が不自由になったんだ。

ごめんなさい、ごめんなさい、、、。」


「あー!もう!また迷子?

迎えに行くのめんどくさすぎ!」


「蒼と一緒に居られるのが嬉しい!

誰にも渡さない!」


「また魔法を使っちゃったらどうしよう、、、。」



いつの間にか私はたくさんの私に囲まれていて、その中でしゃがみ込んで居た。








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