ただいま
あの1件から暫く過ぎた後私と首領はサフズルのアジトへと来ていた。目的はもちろん皆の目を取り戻すこと。彼から聞いた情報を元に私は地下へと足を進めた。長い長い階段を降りた後ようやく地下室のドアを見つけた。
「……ここだ。」
「……すみません首領。着いてきてもらって……」
「気にするな。開けるぞ」
重々しい音を響かせながら地下室のドアが開き私は1歩、また1歩と足を進め部屋の中に入り辺りを見渡した。するとそこに綺麗な布が何かを隠すように覆いかぶさっていた。私は少し震える手でその布を捲った。
「皆……やっと見つけた……ごめんね……遅くなって……」
私は震える手でそっと入れ物に触れ小さく呟いた。あぁ……やっと……やっと終わったんだ…
私は目元を乱雑に拭い笑みを浮かべた。
「首領。お願いがあります」
「あぁなんだ?」
「皆で……皆で私の村に行きませんか?」
私がそう告げれば首領は笑みを浮かべながら頷いた。
皆の目を持ち帰り首領から私の村に行くことが伝えられれば「全員?」「お前は残れよ!アジト空にしてどうすんだ!」「ライ私は一緒に行くからね!」と団員達が賑やかに告げてきた。首領はため息を吐き「行くのは俺とアレン。ニーナとライカ。あと数人で行く。」と告げた。
「まぁアジトを空にするわけいかないからねぇ」
「うん…そうだね」
ニーナの言葉にくすくす笑いながら言えば行くメンバーが決まったのか悔しそうな団員と嬉しそうな顔をしている2人の団員で分かれていた。
「賑やかな帰省になりそう」私は小さく呟き笑みを浮かべた。首領から出発は明日と伝えられ私達は各々部屋へと戻った。
次の日の朝、私達は見送られながら村へと向かった。あの日以来1度も帰らなかった。帰りたくなかった。帰ったらもう皆が居ないって思い知らされるから。道中会話をしながら村への道を歩み続けた。すると暫くして見慣れた森が川が見えてきた。私は歩くのをやめて走るように森を駆け抜けた。そこにあったのはあの日と変わらず滅茶苦茶に壊された村があった。
「……ただいま。」
私は小さく呟くようにそう告げた。あの日からどれくらい経っただろう。分からない。でももう随分帰ってなかった……この村を見るのが怖かった。でも帰ってきた。帰ってこれたよ……
その時ふわりと風が吹き「おかえりライ」と声が聞こえた。私は声が聞こえた方へ振り向けばそこには少し息を切らしている首領達がいた
「ライ?どうした?」
「い……いまリリーの……親友の声が聞こえたような……」
「……そうか。親友もお前の帰りを待っていたんだろうな」
首領のその言葉に私は小さく笑みを浮かべ「……えぇ。」と答えた。
ただいまリリー。待たせちゃってごめんね。
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