失敗……?


カランと音を立て地面に落ちたナイフを私は見つめていた。どうして?彼は動けないはず……なのにどうして今このナイフは地面に落ちているの……?


「何がなんだか分からない……といった顔だな。能力も解けているぞオスキュルテの姫。」


「な……んで……有り得ない……大天使ノ断罪が途中で解けるなんて……」


気まぐれな反響アイリスリフレクション。それが俺の能力だ」


彼の口から告げられた能力。私はその場に崩れ落ち目から涙がこぼれた。あぁ……失敗した。気まぐれな反響……そのせいで私のナイフは地面に落ちたのだろう……そんなことを考えていれば彼の声が響いた。


「この能力はそうだな……簡単に言えば対象者の攻撃を跳ね返す。跳ね返せる場所はランダムに設定してある」


「……その能力で私のナイフは地面に…という訳ね。」


私は目からこぼれた涙を乱雑に拭いキッとテオフィルを睨みつけながら立ち上がった。諦める訳にはいかない。諦めたくない。私はもう一度ナイフを握り彼に刃先を向けた。


「何度刺そうとしても無駄だ。」


「えぇ分かってるわ。でもここまで来て諦める程馬鹿でもないしひ弱でも無いの。」


「ほう……ならどうするつもりだ?」


「……何度でも。何度でも繰り返すわよ。」


私はそう告げてもう一度彼を刺そうとした。ドアがいきなり開けられるまで。



「……アレン?」


「ライ。ドア越しに聞いていた。こいつには攻撃は通じない…やめておけ」


「……ついてこないでと言ったはずなんだけど……まぁいいや。やめないよ。今ここでやめたら……」


「後悔する……か?」


「えぇ。だから邪魔しないで。たとえ私が死んでもこの人は……この人だけは許せない。許したくない」


「ライ……首領がそんなこと許さない。お前はもう俺らの仲間で家族だろ……!仲間が、家族が命捨てようとしてるのをみすみす見逃すほど俺の目は節穴じゃねぇよ…!」


アレンの言葉に私は目を見開いた。あぁ……優しいな。でも……でも今だけはこの優しさに甘える訳にはいかない。この復讐を終わらせる為に。皆の目を取り戻す為に。


「アレン……ありがとう。でもごめんなさい……今はあなたに甘える訳にはいかない……」


「ライっ……!」


私は彼の声も聞かずにテオフィルへと視線を向け小さくこう呟いた


「大天使ノ断罪」


能力を2回使うのは初めてだった。目に熱が集まる。あぁ目が熱い。痛い。でも我慢しなきゃ……大丈夫。村のみんなを失った時の痛みよりは痛くない……!


「さぁ……テオフィル……お覚悟は宜しくて……?」

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