屈しないと決めたから

次の日窓から差し込む暖かな日差しに私は目を覚ました。ゆっくりと起き上がり小さく息を吐き皆が居るロビーへと足を進めた。



「おはようライ。よく眠れた?」


「おはようライカ……まぁまぁかな。」


私はライカとそう話したあといつもと変わらない賑やかな彼らを見ていた。首領は呆れたような表情を浮かべたあと手元にある本へとまた視線を戻し口元には少し笑みを浮かべていた。



「あっライおはよう!」


「よぉライ。顔色は良いみたいだな」


「おはようニーナ。アレンも。」


私はにこりと笑みを浮かべながら言えば首領の傍に移動し「おはようございます首領」と声をかけた。首領は「あぁおはようライ。」と笑みを浮かべながら告げた。




皆と少し賑やかな朝食を終えれば先程までの賑やかさは消え、ロビーはシンと静まり返った。


「ライ。作戦の説明を」


一言、首領からのたった一言でロビーの空間は一瞬で緊張感に包まれた。私はこくりと頷きゆっくり口を開いた。


「今回の相手はアルフィーです。アルフィーは恐らく私が1人で行動していれば必ずサフズルのアジトへと連れ去ろうとします。なのでまずはそれを利用する」


「釣る……という訳か。勝算は?」


「……5割といったところですね。アルフィーが1人ではなく複数人で動いていればこの作戦の危険度は跳ね上がります。複数で来られると私も逃げる術は少ないですから」


私はにこりと笑みを浮かべながら告げた。この作戦はまずアルフィーが単独で行動することが大前提。連れ去ろうとした所を逆に連れ去る算段。単純だけど効率がいい。ゆっくり、でも確実にサフズルを潰す為に……



「分かった。作戦決行は今日の夕方。主要メンバーとしてライは確実。そして俺、ニーナ、アレン。この4人で動く。」



「私も作戦のメンバー……?」


「……怖い?ニーナ」


「全然!だってライの……みんなのお手伝いが出来るんだもん。頑張るね」


「……ありがとうニーナ。他の皆には地下の準備をしておいて欲しいの。アレンと首領は……」


「「ライが暴走しないように見張る役」」


「流石。そしてアルフィーを捕える役でもあります。」


「分かってる」


「任せとけ」


私はその言葉に小さく頷いた。私はもう一度団員達を見たあと「じゃあ皆……お願いね」と告げた。団員達も静かに頷き各々の準備に取り掛かった。




時が過ぎるのは一瞬で、気がつけばもう作戦決行の時間になっていた。私は白のスカートに黒いパーカーを着て出来る限り目立たない様にした。


「じゃあ……行ってきます。」


私がそう告げると「気をつけろよ」「大丈夫!絶対成功するよ!」「こっちの準備は任せとけ」と団員たちの言葉が響いた。あぁ……暖かい。この人たちは本当に優しいな……そんなことを考えながら私は頷き先にニーナと一緒にアジトを出た。





「……ライ?大丈夫?」


「大丈夫。じゃあ……打ち合わせ通りに。」


「……了解!」


ニーナはそう告げて走り出し、屋根の上へと登った。私は顔を隠さずアルフィーの気配を探りながら街の中を歩いた。数十分歩いていると背筋にヒヤリと冷や汗が流れたのを感じた。居る。アルフィーが居る。良かった。彼は1人で行動している……! 私は彼に気づいていないフリをして誘い出すために人通りが少ない路地裏へと入り込んだ。



「この辺りなら……」


「やぁライ。また会えたね」


「っ……アルフィー……」


「こんな袋小路の路地に入るなんて……鈍ってるね。僕の気配、気が付かなかった?」


「……そうね。貴方こそ考えなかったのかしら。どうして私が顔を晒しどうしてこんな人通りのない袋小路の路地に入り込んだのか。」


「……は?」


「悪いわね……私達の方が1枚上みたいよ」


私がそう告げたあとアレンがアルフィーの背後に立ち団員が調合した睡眠薬を嗅がせ気絶させた。



「ライ怪我はしてないか?」


「え……あっはいしてません首領」


「そうか……ニーナよく気付かれずに尾行したな。偉いぞ」


「えっへへ首領に褒められちゃった」


「よし撤退するぞ。アレンそいつ担いでいけるか?」


「当然。」



私は小さく笑みを浮かべ「帰りましょう」と告げ歩き始めた。たとえ私が幸せになれないと決まっていても……もう決めたから。この運命に屈しないと決めたから。だから……


「早く終わらせないと……」

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