帰路へそして打ち明けた秘密
私は無言でアレン達と一緒に山を降りていた。
【オスキュルテの姫】もう二度と聞くことは無いと思っていたその名前に私は唇を噛み締めていた。すると誰かが私の頭を軽く撫でてきた。私は、ばっと振り返るとにこりと笑っている首領がいた。「何も気にする事はない。まぁ逃げろって俺の命令を無視したのは頂けないが……お前のおかげで助かったよ」と告げられた。その言葉はとても暖かく優しいものだった。私は軽く目を伏せ「……はい」と答えた。
数時間かけて私たちはアジトへと戻ってきた。残してきたニーナとライカが涙目で駆け寄ってきて「「おかえりなさいっ……!」」と告げてきた。首領達は「ただいま」「体いてぇ……」「お風呂入りたい……」と口々に告げながらアジトへと戻って行った。私はその場に立ち尽くしその様子を見てきた。その時、「ライ!早く来いよ」とアレンの声が響き私は肩を揺らし笑みを浮かべながら「はい」と答えアジトへと入った。私が抱えてる秘密をいつ話そうかと悩みながら。
「ライ。あいつが言ってたあれってなんなんだ?」
「…あれって?」
「誤魔化すな。オスキュルテの姫ってなんだと聞いてるんだ」
「そ……それは……首領命令ですか?」
「……そうだ。教えろ」その言葉に私の心臓はドクリと跳ねた。私は1度目を逸らし数秒考えたあと、こくんと頷き「分かりました」と告げた。
私は周りを見渡したあとゆっくりと息を吐き話し始めた。「もうあの名前は聞くことはないと思ってたんです。あの名前は……ある人から付けられた名前で……」そう話しているとディランが「そのある人って誰だよ。お前まさか俺たちを裏切ってるんじゃないだろうな!」と声を荒らげた。私は口をつぐみ目を逸らした。すると首領が一言「黙れ。今はライの話を聞いている」と告げた。ディランは少し不服そうにしながらも口を閉じ首領は私に話すよう促してきた。私は頷き「そのある人は……サフズルの首領テオフィル……私の村を滅ぼした張本人です」私のその言葉を聞いたアジトはザワついた。当然だ。私の口から敵の首領の名前が出たのだから。アレンは「お前……サフズルのやつと繋がってたのか?」と問いかけてきた。 私は首を横に振り「直接的な関わりはありません。情報屋の仕事をしていた時にこの名前を知ったんです。おそらく傘下の人と繋がったんでしょうね。そしてテオフィルは私の事をオスキュルテの姫……と呼ぶようになったんです。」そう話を終えると首領は「……オスキュルテ……闇か。あいつらはお前をどうするつもりだ?」と問いかけてきた。私はにこりと微笑んで「殺すつもりでしょうね。なにせただ1人の生き残りですから。あの村の」と答えた。すると話を聞いていたライカが「ふざけんな……!」と怒鳴った。私たちは目を見開きライカの方を向いた。
「ライを殺す?そんなの絶対にさせない!」
「ライカ落ち着け。ライその事態を回避する方法は?」
「……無いでしょうね。私が死ぬまで恐らくサブズルは攻撃の手を緩めない。エイダン……いやアルフィーも今はサフズルのお抱えの情報屋ですしね」そう告げると首領は立ち上がり私の傍へ来た。私は首をかしげ首領を見つめればふわりと優しく抱きしめられた。
「お前を殺させたりはしない。お前は俺たちが必ず守る」そう告げられた後私は周りを見渡した。すると団員全員が力強く頷いていた。私は瞬きをしながら問いかけた。
「どうして……私を捨てたら皆はもうあんな目に合わなくて済むのに……」
「ライ。お前それ本気で言ってるのか?」
「アレン……?」
「俺たちアップグルントは仲間を見捨てたりしねぇよ」と告げられた。その言葉に涙が出た。私は幸せになっちゃいけないのに……そう考えているとライカが頭を撫でてきた。「ライ。私はまだライのことよく分かんないけどさ……もう仲間だもん。絶対守るから」 あぁ…その言葉だけで私は救われる……私は軽く涙を拭ったあと「ありがとう……皆」と笑みを浮かべながら告げた。 少しだけ……ほんの少しだけの幸せを願いながら。
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