奪還開始……!

そして私は数時間かけてノヒク山のふもとまで来ていた。

ノヒク山。それはグレイネスの隣国であるケイベルタ国にそびえ立つ大きな山だ。私は小さく息を吐きタブレットで【ジルコニウムの調停者】について調べながらノヒク山の山道を歩き始めた。「ジルコニウムの調停者……相手は1人か……いやでも複数の場合も……」そんな事を呟きながら歩いていると背後から枝を踏む音が聞こえた。私は立ち止まり「……出てきなさい。今出て来れば見逃してあげるわ」と告げた。すると1人の男が現れ「こんにちはフォンセ……そしておやすみ」と告げて背後から薬品を嗅がせてきた。それは一瞬の事で、私は抵抗する暇なく意識を失った。



数十分後、私は廃屋で目を覚ました。周りを見渡すとそこには……腕や足、顔から血を流している団員達が転がっていた。私は目を見開き駆け寄ろうとしたが、縄で腕や足を縛られ動けずにいた。「っ……皆!起きて……首領……!」と私が叫べば数人が肩を揺らし反応を示した。その中には首領も含まれていた。


「(良かった……取り敢えず無事で……)っ……早く縄を解かないと……」

「それは無理だよフォンセ……いや今はライ……だったか?」

「……なるほど。ジルコニウムの調停者……調べても出てこない訳です……名前を変えているなんて思いませんもの……ねぇ?エイダン?」

「……今はジルコニウムの調停者だ。ライ。」

「それは通称でしょう?今は何と名乗っているのかしら……エイダン。」

「……じゃあ改めて自己紹介をしようか。僕はアルフィー。またの名をジルコニウムの調停者。そして……君を地獄へ突き落とす者だ。」

「私を……地獄へ?巫山戯ているのかしら?」

「いいや巫山戯てなんかないさ。」彼はそうにこりと笑みを浮かべながら告げるとアレンの髪を掴み平手打ちをした。パンっ!と乾いた音に私は目を見開き「アレン!」と声を張り上げた。アレンはその痛みに眉を顰めゆっくりと目を開いた。「は……ライ……?」と小さく聞こえた声を私は聞き逃さなかった。アルフィーはにこりと笑みを浮かべ「おはよう。さぁまた遊ぼうかアレン君」と告げた。アレンは「てめぇ……ライに手を出してみろ……殺すぞ」と睨みつけながら告げ、フラフラになりながら立ち上がった。私はその様子を見て唇を噛み締めていた。するとアレンと目が合い、『大丈夫だから心配すんな』と口パクで伝えてきた。私はこくりと頷きアルフィーとアレンの様子を見ることにした。

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