7日に一度のジョブチェンジ ~30代のおじさんは自身の職業に振り回されるようです~

時亜 迅

プロローグ パーティーを強制離脱させられる

「貴方はこのパーティーに相応しくない。」



「.... はい?」


唐突に言われたその台詞を、当時の俺は理解できなかった。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



「おい!そっちに行ったぞ!」

「任せて!」

「気を付けろ!こっちからも来てる!」

「それなら俺が.... !」


金属のぶつかり合う音が、洞窟中に響き渡る。洞窟の中には四人の姿があった。

男が三人、女が一人。彼らは今、ある獣と戦っている最中であった。


「ここは狭すぎる!剣がうまく振るえない!」

「なら俺が切り込む。」

「でも、あなたの体は.... 」

「心配するな。それよりも今は目の前の敵をどうにかするぞ!」

「ええ、了解です!」


獣の前に立つ二人の男。獣が少し動く度に彼らは後ろに下がっていく。じわじわと、獣と彼らの距離は詰まっていく。


[ブモォォォーーーー!]

「「っ!?」」

獣が先に動き出す。さっきまで攻撃の素振りを見せない獣に少し油断していた彼らに向かって突進した。


「“アイスウォール”!!」

[ブモッ!?]


しかし、その攻撃は当たらなかった。

女が発した言葉と同時に氷の壁が獣の目の前にそびえ立つ。

そして、


「ここだぁーーー!」

  

  ザクッ

[ブモォォォーーーー.... ]


三人目の男が獣の死角から飛び出し、短剣を投げた。それは獣の頭に深く突き刺さり、獣は大量の血を流しながら倒れた。



「ふぅぅ~ギリギリたったぜ。」

「ほんとにそうよ!あんたが遅れたから二人に迷惑かかったじゃない!」

「えぇーでもいいじゃん。最奥のお宝っぽいものも見つけてとってきたんだぜ?」

「あんたって奴わ!....

「いい加減にしないか、二人とも。俺たちに何かあったわけでもないし、な?」

「でも、セイジさんの体が....

「いいんだよいいんだよ。こんなおっさんの体なんかどうでも。」

「ほら!セイジにーちゃんがそう言ってんだしいいじゃんか!」

「それとこれとは話が違「二人とも。」

「「はい.... 」」


この二人は放っておくといつも口喧嘩になるんだよなぁ.... 。おっさんのからしたらかわいいじゃれあいのようなものだが。

「でも、本当に大丈夫なんですか?」

一人の少女.... マリナが俺を見上げてそう尋ねてくる。

「大丈夫だよ。おっさんの底力と回復力なめるなよ?」

「でも.... 」

この子は本当に心配性だなぁ。

「大丈夫だよ。」

「っ!?」

俺はこの子の頭を撫でる。自分より背の低い子が不安な顔をしているとついついやってしまう。

「あぅあぅ~.... 」

「ん?どうした?」

顔が赤くなっている。熱でも出たのだろうか。

「あっ、いいなぁー。俺も俺も!」

「お前はいいだろ.... 」

「ヤダヤダやってくれよー!」

「まったくおっさん使いが荒いな。」

と、いいながらも撫でてしまう。あまあまなのはわかっていてもダメなんだ.... 抗えんのだ。

「むふふー。」

なんだかんだアトリエもまだ子供ってことか。

「皆さん!剥ぎ取りが終わったので、今日はこの辺で帰りましょう!」

「いやったー!」

さっきの獣.... もといファングボアを解体していたマクリスが言った。

なんだかんだ疲れたなぁ、今日も。


俺たちのパーティー、❲暁の集い❳は、この国 

❲カタリス❳のなかでも五本の指にはいるパーティーだ。

メンバーは、

マリナ=フォートレス 魔術師

アトリエ=トランジスト 盗人

マクリス=ユーフォード 大剣士

そして俺、セイジ=レイヴァンド 村人兼サポーター

である。

あることがきっかけで彼らとパーティーを組んでここまで来た。なかなかいいパーティーなのではないかと思っている。

今日はカタリス周辺のアタルイードの森の探索の依頼を受けていた。

今はギルドに帰って報酬を貰おうとしているところだ。

「長かったー。もう疲れたよー。」

「もう少し待っていてください。

すいませーん!アタルイードの森の依頼を

達成したので報酬を貰いたいのですが!」

「少々お待ちくださーい!」

ギルド内のカウンター前でマクリスが言うと、奥から声が発せられた。

「はいはーい!❲暁の集い❳さんですねー!

カードをかざしてくださーい!」

受付嬢がそういったので全員のカードを

結晶板にかざす。

「確認しましたー!こちらが報酬でございまーす!」

受付嬢が金貨の入った袋を用意した。

「ありがとうございます。」

「それではまた次のご利用をお待ちしておりまーす!」

マクリスはそれを受け取り俺たちはギルドをあとにした。


俺たちはハウスに帰ってきた。

やっと寝れる。

「今日も疲れたわね。私ダメそうだから寝るわね。」

「あぁ、お休み。」

「お休みなさい。」

「俺もねむいからねるねー。おやすみー。」

「あぁ、お休み。」

「................。」

「どうした?マクリス。」

マクリスはなぜか黙っていた。手には小さな手紙が握られている。

「............セイジさん。少しお話があります。」

少し悲しそうな顔でマクリスがそう言った。

どうしたのだろう。明日の食材がないのかな?そう思いつつ、俺はマクリスに彼についていき、彼の自室へ入った。

  ガチャン

扉が閉まり、静かになった。

そして、次にマクリスが発した言葉に俺は耳を疑うことになる。


「貴方はこのパーティーに相応しくない。」



「はい?」

俺は理解できなかった。だけど少ししてから俺は悟った。俺は要らなくなったのだと。村人はこのパーティーに要らないのだと。

「貴方は弱い。今このパーティーに必要なのは、戦力。サポートは要らないんです。」

「................」

「他の二人も同じようなことを言っていました。なので、貴方はパーティーから離脱してください。拒否権はありません。」

「....................わかったよ。」

俺は、そうしてこのパーティーを去った。

もう30歳になるってのに無職か....。

俺は誰もいない夜の公園のベンチに腰かけた。

「貴方にはお世話になったので、新しく住む家を買えるお金は後日渡します....か。」



ちくしょう。



村人で❲暁の集い❳のメンバーになれたのはやはり奇跡だったんだ。俺は、俺には、なんの力もなかった。



ちくしょう。



「俺は結局、何にもできないか。」


昔から何も変わっていないじゃないか。


「............こんな職業じゃなかったらよかったのにな。」


だが、この言葉が、この出来事が、俺の人生を瞬く間に変えていくことを俺はこの時

知るよしもなかった。




























『ネーム セイジ=レイヴァンドの発言から

コード「こんな職業じゃなかったらよかったのにな」を確認しました。

     

     ロード中............完了。

      

       認証しました。

これより、ネームセイジ=レイヴァンドの固有スキルもとい神々のプロミスコード

            “ジョブチェンジ”

                        を解放します。

        ジョブチェンジをダウンロードします。』

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