第17話「初めてのハニートラップ。」
クラークさんと共に、フェンさんとエリックさんの元に戻ると、二人はテントを片付けわった後だった。エリックさんがこちらに向かって手を振ってくる。
「シェナさん! クラークさん! ご無事でしたか。良かったです。」
「はい。大丈夫でした。さぁ行きましょうか。」
にこりと微笑むと少しエリックさんは頬を染め顔を逸らした。そんなエリックさんが少し愛らしくなる。女に微笑まれただけで顔が赤くなるのは、可愛らしい。
荷物を持とうとするとサッとクラークさんが荷物を持ってくれる。
「ありがとうございます、クラークさん。」
「気にするな、男の仕事だ。」
そう言ってクラークさんは笑う。それが嬉しくて微笑み返すと、クラークさんは少し頬を染めた。
何その反応、期待しちゃう……。
「さ、さぁ行こう。まだ魔王城まで道のりは長いからな。」
「クラーク顔真っ赤だな!」
ゲラゲラと腹を抱えてフェンさんが笑う。
「うるさい! さぁ行くぞ!」
スタスタと歩いていくクラークさんの後を「はいはい。」とついていくフェンさん。
エリックさんは苦笑しながら後をついていく。
そんな道すがら、ドンっとぶつかってくる人物がいた。
「あっ、ごめんなさぁい♡」
フェンさんにぶつかったのは語尾にハートが付きそうなほど甘ったるい声で話し、胸を強調するように身体を寄せ、随分派手な装備に身を包んだ女性だった。
うわぁ、と思っていたのは私だけではないらしい。クラークさんとエリックさんも少し引いていた。
つまるところのフェンさんはというと。
「あぁ、気にすんな……かわいいベイビー大丈夫かい?」
だいぶ気持ち悪くなっていた。
「うんっ♡大丈夫ぅ~♡ねぇ、おにぃさんイケメンだね~♡勇者さん?」
そう言って、フェンさんに身体をぴっとりと寄せる女性。尖った耳を持っているから、エルフだろうか。もしかしたら魔族かもしれない。
だらりと涎を垂らしながら鼻の下を伸ばしているフェンさんに呆れながら、フェンさんに近づく。
「フェンさん、女性にうつつを抜かしてる暇はありませんよ?」
女性は私のことを見るなり固まった。失礼だな、と思っていると。
「私よりでかい……。」
そう呟いた。
そこかい、と思っているとフェンさんは取り繕い始める。
「いや! 君の方が可愛いから……安心して。」
「フェンさん殴られたいですか?」
「やめろ! 暴力女!」
「ふぅん? ねぇ、貴方聖女でしょ。私と立ち位置変わってよ♡私の方が聖力すごいんだから♡」
「君が変わってくれるなら最高だなぁ。」
「変わるつもりはありません。さようなら。」
そう言ってフェンさんの耳を掴み引っ張る。「いでででで!」と悲鳴を漏らしながらフェンさんは付いてくる。
「うわーん、じゃぁね。美人さーん……。」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます