第6話「決めた! 愛を持ってキューピットになる!」

少し思案する。でも私が洋一きゅんと結ばれる未来が見えなくて、どうしても亮太きゅんと一緒になってほしい。それは変わらない。

愛を向けられることは嫌ではない。それは重々承知している。

ではどうするべきか? 答えは簡単だ。愛を受け止めて、その上で亮太きゅんとくっつける。これしかない。


「洋一きゅん。」


「は、はひっ。」


少し肩をびくりと震わせる洋一きゅん。そんな彼の肩を掴み私は言の葉を紡ぎだす。


「好きだなんて言ってくれてありがと。でもね、私にはその気持ちにはこたえることが出来ない。だって洋一きゅんと亮太きゅんお似合いなんだもの。」


また彼の表情が暗くなる。私は構わず言の葉を紡ぐ。


「二人で笑っている洋一きゅんが好き。一緒にご飯を食べてる洋一きゅんが好き。一緒に眠っている洋一きゅんが好き。学校で彼に会って笑って、時には怒って、泣いて、ぐるぐる目まぐるしくても、そんな青春をしている君が好き。私の気持ち、受け取ってくれるかしら?」


にこりと微笑む。洋一きゅんはぽかんとしていた。


「貴方は眩しくて、私なんか手が届かない人だよ。好きな人に愛されて、好きな人の隣で笑えて、好きな人の隣で泣けて。好きな人の隣で怒れる。それってとても素敵なこと。世界にはそうできない人が沢山いるの。洋一きゅんには素敵な人がいる。それだけで世界が華やぐと思わない? 君はそれじゃぁ不満かい? 友達としてでもいい。今はね。私なんて友達すらいなかったんだから!」


洋一きゅんは少し考え込むと、「そうだね、そうだよね。」と笑った。


「友達がいるのはいいことだよね。姉さんにもその世界を見せてあげたい。姉さん、まずは僕と友達になってください……。」


恐る恐る手を伸ばしてくる。私はその手をきょとんと見つめる。


『あんたなんか友達なわけないじゃん! あんなのごっこだって。芋相手にするわけないじゃん。』


そんな言葉が脳裏によぎるが頭を振り払う。洋一きゅんはそんなこと言わない。

彼の手を取る。そしたら洋一きゅんは嬉しそうで。


「わぁい! よろしくね、洋子ちゃん。」


「……。よろしくね。洋一君。」


少し眩しくて、温かかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る