機械の故障 二倍
仲仁へび(旧:離久)
第1話
機械と水の相性は最悪だ。
だから俺は、パソコンなどを持って移動するときは、濡らさないように細心の注意を払う事にしていた。
カバンの中央にいれて、ビニールでつつんで、傘もなるべくかばんを守るようにさす。
手間はかかるさ。
時間もな。
けど。
パソコンには、仕事でつかう大事なデータが入っているからこれくらい当然だ。
俺のミスで何十人、何百人の人の迷惑がかかるんだから。
その苦労は背負うべきだ。
けれど世の中には、どれだけ注意しても足りない予想外の事が起きる。
「追突するぞ!」
乗っていたバスが、ありえない挙動でガードレールにぶつかった。
とっさに頭をまもって、身をかがめたから怪我はしなくてすんだ。
しかし荷物棚にのせていたカバンが吹っ飛んで。
追突の衝撃で。割れた窓の外に飛び出してしまう。
そこに不幸にも、後続の車が通りかかる。
そうなるともう。
……悲劇しかない。
「カバンはどこだ!? どこにいったんだ。って、あああああ!!」
探し出したカバンは、ぺしゃんこになっていた。
車のタイヤの跡がついていた。
中のパソコンもバキバキになっていた。
ダメ押しに降り注ぐ雨までしみこんでいた。
おわった。
俺はうなだれた。
正直事故のダメージよりも高いと思う。
体が無事だった喜びを一瞬で忘れさせるなんて、罪深い奴だなお前。
機械の故障 二倍 仲仁へび(旧:離久) @howaito3032
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