初恋の幽霊

篠崎 時博

幽霊との再会

 4月。中学生になって約1週間がぎた。

 午後の授業が終わり、僕、前橋まえばし 海斗かいとはちょっとワクワクしていた。

 今日は部活動に初めて参加できる日。

 周りの人はみんなどこの部に入るかまだ悩んでるようだったけど、僕はもう決まっている。美術部びじゅつぶだ。


 放課後、友達と別れて教室からそのまま美術室へと向かう。

 ドアのガラス窓からから中の様子が見える。

 もうすでに新入生らしき人たちが何人がいた。

 扉を開けて、先輩らしき人に声をかける。


「あ、入部希望?」

 声をかけた短いかみのその先輩は、僕にそう言うと他の新入生のいる窓側に案内した。


 新入生たちの顔をちらっと見る。

 楽しそうに話す人たち。そのほとんどが女子生徒だった。

 男子は僕を含めて2人だけ。


 後ろの席の柚木ゆずき君はサッカー部に入ると話していた。

 小学校からの友達もみんな運動部を希望していた。


 友達つくれるかなぁ…。


 知らない人ばかりの環境はどうも慣れない。

 そうでなくてもここにいる新入生の殆どは、違う小学校から来ている人ばかりだ。


 短い髪の先輩と眼鏡をかけた先輩が部屋の時計を見ながら話している。

あかね、遅いね」

「委員会の仕事じゃない?」

「ちょっと時間過ぎてるし、始めちゃう?」

「まぁ仕方ないね。始めちゃおっか」


「ちょっと聞いてー」

 眼鏡の先輩が僕達に声をかけた。


「大体みんな集まったかな。早速さっそくだけど自己紹介じこしょうかいをしたいと思います」


「私は3年の津森つもり 祐希ゆき。この美術部の部長です」

 眼鏡をかけた先輩が言った。


「同じく3年の芳田よしだ 佳奈かなです!」

 今度は短髪の先輩が言った。

「3年はあと1人いるけど、まだ来てないな」

「あとは2年が――」


 ガラッと音がして息を切らしながら1人の女子生徒が入ってきた。

「お、茜〜!遅いよー」

「ごめん〜。先生に呼び止められちゃって…」


「遅れてすみません。えーと、副部長の持田もちだ 茜です」

 そう言って顔をあげた彼女を見て僕は息をんだ。


 その顔には見覚えがあった。


「ねぇ、君大丈夫?幽霊ゆうれいでも見たような顔をしてるけど…」

 芳田先輩が心配そうに声をかけた。


「だ、大丈夫です」

 そう言いつつもきっと僕はさおだったのだろう。

 だって、目の前にいる人は、その人は――、


 僕の初恋の人、そしてだったから。

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