第6話 逃げるという決断
二人は避けてきた
俺の話を
無意識にではなく
意識的に・・・だって
俺の話なんてすると
二人の空気が不味くなるからさ・・・きっと
俺たちの共通していた友達だって
俺の話は
あれ以来
二人の前ではしてないと思う
俺は
久実の元カレで
奴の元親友
二人が付き合い始め
俺は身を引いた
いや
違うな
俺は不様に裏切られ傷つけられ
捨てられた
二人に
だから
高3の夏休み前
学校をやめた
親は知らない
本当の事情を
言えるか?
言えるわけない
だって
只の失恋で高校を辞めるなんて
両親には言えないよ
そんなの
格好悪すぎる
バカすぎる
大人からはきっと
鼻で笑われる
只の失恋
よくある失恋
世の中で失恋したことない奴の方が少ないよ
きっと
だけど
俺は
俺には耐え切れなかった
本当に好きだったから・・・二人とも
俺は一ヶ月
学校を休んだ
ろくに部屋から出ず
食事もほとんどとらなかった
何も考えたくなかった
考えてしますと
消えてしまいそうになってしまうから
でも
嫌だった
俺が悪いことしたわけではない
俺がどうして
消えなくてはいけないんだ!!
だんだんと
腹が立ってきた
そして
俺は動き始めた
その頃
母親は心配し
学校などに相談に行っていた
担任も部屋の前まで来たけど
話したくなかった
だから誰にも
会わなかった
父親は
何も言わなかったけど
夜中
“トントントン”
ノックして
「夜食で作りすぎたから食っとけ
早く食わなきゃ伸びるぞ」
三日目くらいから
そう言って
部屋の前にカップ麺とペットボトルのウーロン茶を置いて行った
“カップ麺って作りすぎたりするもんじゃねーだろ”
と、心で突っ込みを入れながら
父親の優しさを飲み食いし
空っぽのカップとペットボトルを寝る前に部屋の前に置いた
親の心配がヒシヒシと伝わり
限界を迎えようとしていることが感じたころ
やっと集まった
次に俺が行くべき場所が・・・
逃げ場
俺は徐に部屋から出て
両親のいるリビングへ行った
二人は面白いくらいキョトン顔でこちらを見るから
笑っちゃいそうになったけど
そこはこらえ
真面目に話した
「学校で居場所がない・・・いじめとかではないけど
行きたくない
理由は具体的には話したくない
だけど
このまま引きこもるつもりはない
しっかり考えて決めたことだから
応援してほしい・・・
通信制の学校に編入したい
あと
志望大学も決めてるから
その近くに小さくて古い所でいいから
安い所でいいから
一人暮らししたい
迷惑かけたりしないから
信じてほしい」
そう言って
その資料を渡した
母は心配そうな顔で
父親の顔を見た
父親は
無言で俺から資料を受け取る
シリアスな空気
うちの家には・・・
俺と両親との関係には全く似合わない空気感
静まった部屋に
資料をめくる音が響く
その間
俺は無言で下を向く
あまりに
言葉数少なく
俺にしては用意周到な状況に揃えたそれを
両親は真剣に見て
父は深くため息をついた
そして
二人は
親なりに考えたのだろう・・・
“もしも
息子の願いを受け入れなければ
何か良からぬことでも起こりそうな予感がする“
ま、わざとらしいくらい
そんな空気感作ってたんだけど
両親は、こんな無理やりな状況を
すんなり受け入れ
直ぐに動いてくれた
俺は
車で行くには困難なほど遠くの県外の部屋を借り
通信制の高校へ編入した
引っ越しも
家からは服と最小限の勉強道具以外持たず
家を出た
両親は
最後の最後まで
心配をしてはいたが
それを口にすることは無かった
“母さんには
連絡しろよ・・・お前の事を信じてるからな“
父は
その言葉だけメモにして
俺に手渡した
言葉で伝えればいいのに
紙に書いて渡すのは
やはり
この冒険の様な決断が間違えか?正解か?
それをしっかり考える暇もないほどに
スピーディーに動いたからで
俺はその紙を見ながら
“心配かけてごめん
親不孝はしないから・・・”
と、心の奥でかみしめた
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