宣言!私、脇役卒業致します!

餅月 かさな

第1話

今日は雲1つない快晴!転校初日にふさわしい、清々しい朝!


……でも


「ひゃぁぁ〜!ちこくちゃ〜う!」


私は今、緑色になりつつある桜並木を走っています!


転校初日にチコクとか、ありえないよぉ〜!


そう思って一生懸命走って、職員室に行ったの。先生に案内されて、教室の前に来た時、ちょうどチャイムがなった。


ギリギリセーフ…かな?


「今日から転校生が来た。」


先生が説明してくれてる…うぅ…キンチョーしてきた…


「入ってこい」


あぁ〜よばれちゃった…!うまくはなせるかな…?


なんて思いながら先生の隣へ歩いていく。


「ア、アリシス・フローラです…!えっと、よろしくおねがいします!」


ぺこりと頭を下げるとパチパチと拍手が起こった。


良かった…成功したんだ…


ふぅ…と息をつく。


「フローラの席は…っと、ノヴァの隣が空いているな。あそこに座ってくれ。ノヴァ、席まで案内してやれ」


と先生が呼びかけると1番後ろの窓側の席の男の子がぶっきらぼうに手をあげてくれた。


私は彼の隣の空いている席に座る。


「ノヴァくん…だっけ。私はアリシス・フローラ!仲良くしてくれるとうれしいな!」


と右手をだして握手を求める。けれどノヴァくんは応えてくれない。


「名前はさっき聞いた。」


とそっけなく答える。それに続けて


「あと、転校初日に時間ギリギリで来るような奴と仲良くするつもりは無い。」


そう冷たく言いはなつ。


そんなに冷たく言わなくてもいいんじゃないの!?


と思い、私はふいっと顔を彼から背けた。



それから数日後…


あれからノヴァくんとはたまに話す仲になった。私がしつこく話しかけたら答えてくれたのだ。


「ねぇねぇ、アリシス・フローラちゃんって子、いる?いたら呼んでくれると、僕、うれしいなぁ〜」


と少し高めの男の子の声がして、ドアの方を見る。


するとそこにはふわふわしたミルクティー色の髪とクリっとした、若葉色の目が特徴的なかわいらしい男の子がいた。


クラスメイトに呼ばれ、私は男の子の方へ向かう。


すると


「来て。」


いきなり手首をつかまれて彼は走り出す。


「きゃっ…!」


思わず声が出てしまった…


少し走り…


「もう大丈夫かな…」


彼は呟く。


「え?なにが?」


と息も絶え絶えにたずねると


「2人とも、もう大丈夫ですよ」


彼の声を合図に2人の男の人が来た。


片方はキレイな金髪を真ん中に分けていて、少しかきあげている。そして美しい黒猫を連想させるような黄色…いや、金色の瞳。そんな彼に思わず見とれていた。


すると


「ん?なんだお前…俺の目が怖くはないのか?」


と聞かれた。私は素直に


「いえ、とてもキレイだと思います。」


と答えた。すると金髪の彼は目を少し見開き


「ふむ…。俺はお前が気に入った!お前には俺の伴侶になる権利をやろう!」


と告げられ…


「えぇぇぇぇ~~~!?」


びっくりして、つい叫び声をあげちゃった…。


「ローズハイトさん。何言っているんですか。」


聞いた事がある声…


深海のように引き込まれてしまいそうな深い青色の髪、


左側しか見えない彼の鮮やかな青色の瞳は深海に差す一本の光のすじのよう…。


「ノヴァくん!」


ノヴァくんは私が声をかけても知らんぷり…うん…いつも通り…


なんて少しショックを受けていると、


「最初にコイツに目をつけたのは俺です。」


え?…え!?何のこと!?


急な展開に戸惑っていると、後ろからぎゅ…っと優しく抱きしめられ


「2人には悪いですけど、僕もアリシスちゃんの事、気に入っちゃいました。僕もあきらめませんからね」


と茶髪の彼…。


えぇぇぇぇぇぇ!?私、これからどうなっちゃうのぉ〜!?


______



「と言うわけなの…私ね、彼達がみんなの前で私にくっつかれるの、嫌ではないんだけど、ちょっとはずかしいんだよね…だから、貴方からあの人達に注意してくれない?だめ…かな?」


とあざとく上目遣いでこちらを見つめるヒロイン…もとい、アリシス・フローラちゃん。


はぁ?そんな馴れ初めの為だけに前半部分使われたの!?


私この物語の主人公なのに!?


…まぁ言いたい事は色々あるけれど…


「んー…頑張ってみるよ。」


と目を笑わせずに伝える。まぁ目元見えてないから意味無い

んだけどな。


「アリス〜!どこだ〜!」


おっと…もうあだ名で呼ぶ仲なのかい?早くない?


「あ、もう行かなきゃ…じゃあ、ありがとう!」


ドアが締まり、教室には私一人だけがいる。


疲れた。非常に疲れた。てかあの子、本気で言ってんのか?


「注意してくれ。」って…


はぁぁ~~~~~~……(ため息)


わかってない感じだな…あの子…


ナルシストのパツキン、ケイン・ローズハイトは成績優秀!容姿端麗!圧倒的カリスマ力!謙虚さ以外はを兼ね備えたスーパーエリートよ?しかもこの国の軍の次期隊長候補…正直顔は好みじゃないんだよな。


厨二病の青髪、クロエ・ノヴァはパツキン同様カリスマも持ち、成績も上位、容姿端麗ではあるが、彼の魅力は何よりサポート力、今現在の国軍指揮官にも負けない現場把握能力。この学園からの指揮官候補だと言われている人物だ。1回話したことあったけど性格悪かったなぁ…


最後にあの一見無害そうに見える腹黒トイプードル(以下トイプー)…リント・ミヤサト。私と同じ東国出身である。持ち前の人懐っこさと会話の上手さ…彼に隠し事が出来た人物はパツキン、厨二病以外にいないと言う……あらゆる商会が喉から手が出るほどに欲しがる人材…。同じく彼も軍の外交官候補だと言う…いかにも女子ウケ狙ってる見た目だよね。


学園で人気絶頂中の3人がたった1人の女子生徒にメロメロだったら、他の人の怒りもそりゃ買うわ。可哀想に…


でもベタベタを抑えたい理由が「女子の反感が怖い」じゃなくて「ちょっと恥ずかしい」って…頭痛くなってきた…。

さすがヒロイン…。


おっ、そう言えば自己紹介がまだだったね。私の名前はアユム・オクデラ。奥寺歩ってやった方が分かりやすいかな?

さっきも言ったけど、あのトイプーと同じく東国出身。会ったことは無いんだけどな。


学年は私とヒロインのアリシス・フローラ、厨二病のクロエ・ノヴァが2年生。パツキンのケイン・ローズハイトは3年生、トイプーのリン・ミヤサトが1年生。


皆…この話を読んで、残念だったね…最初はゆるふわのかわいい女の子が出てきたと思ったら、こんな女の体に男の顔を付けたような奴が主人公だなんて…。


しかもヒロインにアドバイスをする異様に主要キャラに詳しいモブ。だけどね、そこの君。安心しな。私、モブ辞めるから。


あ、今ちょっと心配したでしょ。安心しなよ。私、学年で1番成績いいから。運動神経も男子と差程変わらないし、スレンダー美女でしょ、そんでちゃんとモテる完璧美少女だからさ。私並みの守りたくなるオーラを持ってる人間なら、今のヒロインの座、奪えるんじゃない?


でもアリシスちゃんいい子だし、取るのは…かわいそうかな…?


いや、ここは心を鬼にして…私はヒロインの座を乗っ取り、素敵な恋人を作るんだ!


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