教室での一時

 Side エリク・クロフォード

 

 =朝・クロガネ学園1年E組教室=


 朝のHRが始まるまで残り数分。

 教室の外で遠巻きに自分達を眺める生徒がいた。

 やはりと言うかテロリストでの騒動が噂になっているようだ。

 

「暫くはこの状況が続きそうだな――」


 シュンはこの状況にウンザリしているのか溜息をつく。

 僕もそれに釣られるように苦笑した。

 

「と言うかシュン、教室でもそれを見るんだね」


「ああ」


 シュンの手には学生寮の部屋で見ていたバトルスーツのカタログ雑誌が握られていた。

 本当にバトルスーツが好きなんだなと思う。

 

「それにしても――」


 ふとシュンは視線をチラッと移す。

 傍には青葉 マリがいた。

 朝練の疲れなどまるで感じさせないような様子だった。


「私がどうかしましたか?」


「いや、エリクとの距離感が近いなと思って――なに? もう女子と仲良くなったの?」


 少し顔を赤らめながらシュンは言った。


「はい! バトルスーツの装着許可が降りたら決闘する中です!」


 と、元気よくマリは答えて僕は「アチャー」となった。

 そんな大きな声で明かす事はないだろう。

 いや、いずれバレる事だろうけど。


「どう言う仲だよソレ――」 


 当然の疑問をシュンは投げかけるが――


「つまり仲良しと言うことです!」


 返答は僕にとって斜め上を行くものだった。

 答えたはマリ本人「えっへん」と言った感じで何故か自身ありげな様子だった。


「なあエリク? そのなんだ? この子なんかおかしくないか?」


「こ、個性的だとは思いますけど――」


「個性的で済ますのか君は?」


 シュンは頭を抱えながら心配してそう呼びかけた。

 

「そんなに私おかしいですか?」


「おかしい」


 エリクが止める間もなくシュンはハッキリとマリにそう告げた。


「そ、そうなんですか?」


 ショックを受けた様子だった。

 目に見えて落ち込んでいる。

 

「もしかして中学時代からそんな感じか?」


「よく分かりましたね」


「……周りは苦労しただろうな」


「どうしてそれを!? もしかして柳君はエスパーですか!?」


「大声でなに本気で驚いてんだ……」


 シュンは呆れ果てていた。

 僕は中学時代のマリの周辺の人々に何故だか同情のような感情が湧き出ていた。

 悪い子ではないのだが――きっとこの性格に振り回されて苦労したんだろうなと思う。


 周囲の反応も様々である。

 笑ったり苦笑したりと言う感じで。


「やはり性格を変えた方がよろしいんでしょうか? だけど性格を変えるにはどうすれば?」


「そんな簡単に変わるようなもんじゃないだろ……」


 あたふたするマリにシュンは呆れた視線を向けながら冷徹に現実を突きつける。


「そ、そんな――」


「確かこの学園って3年間クラス替えなしだったよな?」


 ショックを受けるマリを余所にシュンは僕に問い掛ける。

 そのシュンの言葉でマリは「そんなに私の事が嫌いになったんですか!?」とさらにショックを受けた様子だった。

 二人に失礼だが何だか二人で漫才しているみたいだ。


「クセが強い性格はしているが悪い奴じゃないのは何となく分かったからとにかく落ち着け――昨日、あんな事があったのに本当に元気だな」


「当然です。これでもストライクヴァルキリーズを目指す身ですから」


 エッヘンと胸を張って誇らしげに言うマリ。

 ちょっとお疲れ気味なシュンとは対照的な態度だ。


「そろそろ予鈴ですので授業の準備をしないと。それでは――」


 そう言って彼女は席に戻っていった。


「賑やかになりそうだな」


「う、うん。そうだね」


 シュンの言葉に僕は言葉を濁しながら返した。 

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