青葉 マリ
Side エリク・クロフォード
=早朝・クロガネ学園敷地内=
やはりあんな事件があったせいか学園は物々しい雰囲気に包まれていた。
パトロール中のバトルスーツや上空のヘリ――マスコミのヘリだろうか? などが飛び回っている。この様子だと敷地外はマスコミだらけだろう。
それでも日課なのかランニング、トレーニングを行っている生徒は少なからずいた。
バトルスーツは装着者の身体能力がそのまま性能に直結すると言って良い。
例えば体力なんかもそうだ。
バトルスーツは戦闘用のパワードスーツで手足を動かして動かすのだから体力は必須なのだ。
更には衝撃に耐えうる頑丈な体もなおよい。
技術も大切だがそう言う基礎的な部分を疎かにしてはダメなのである。
そんな風に思いつつランニングをしていたら――
「あ、おはようございます!!」
「お、おはようございます」
学校指定の体操着。
白い体操服に黒のスパッツ姿。
青髪のショートヘアーで男装の劇団女優のような顔立ち。
四肢、体ともにホッソリしているが女性らしいラインは出ている。
アスリート体系で入学前から熱心に鍛えてきた口だろう。
そんな容姿の少女に声を掛けられた。
元気よく大声で呼びかけられたので僕はちょっと引いてしまった。
「エリク・クロフォード君ですね! 同じ一年E組の青葉 マリです! 気軽にマリと呼んでください! 私もエリク君って呼びますね?」
「は、はあ」
元気が取り柄ですと言わんばかりの女の子だった。
昨日あんな事件が起きたばかりだと言うのに凄い元気だ。
「私はクロガネ学園で頑張って将来はストライクヴァルキリーズに入隊する事が目標なんです」
「そうなんだ」
ストライクヴァルキリーズ。
ブレイブフォースの女性だけの部隊であり、女性達の憧れの的である。
マリ同様にそう言う目的の女の子は大勢この学園にいるのだろう。
「でも昨日の事件で痛感しました。自分の未熟さに。だから頑張らないと――」
「あの、熱意は分かるけど無理してない?」
「その、本音を言えばこうでもしていないと体が落ち着かないと言うか――自分の無力さが腹立たしくて悔しいんです」
「なら猶更落ち着いてください――」
「ですが――」
「言いたい事は分かります。僕もそうでしたから。だけど今のマリさんはペース配分を覚えるべきです」
「ペース配分……ですか?」
「とにかく、頑張るなとは言いませんが僕達はこれから反省文やら課外活動並びに肉体労働が待ってます。自主練のし過ぎで学業を疎かにするのは良くないですよ。とにかく自己管理するのも必要な事です」
「な、成程――確かに一理ありますね」
彼女は考え込む。
そして――
「分かりました。ちょっと頭を冷やしましょう。エリク君の言う通りにします」
「分かってくれたんですか?」
「それと――今思いついたんですけど」
「え?」
「学園でバトルスーツの着用をできるようになったら私と戦ってくれませんか?」
「えーと、つまり決闘ですか?」
「そう思ってくれても構いません。私は上を目指します。これからどんな困難が待ち構えていても私はその困難に挑み続けます。それは第一歩です」
彼女の眼は真剣だ
実戦を経験したせいか戦士のような雰囲気すら感じる。
その視線を真っすぐ受け止めて僕は――
「分かりました。受けて立ちます」
そう言うと彼女は表情を崩し、笑みを作り瞳を輝かせる。
「ありがとうございます! エリク君!」
と、マリは喜んだ。
その様子にエリクは「ハハハ」と苦笑した。
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