第43話 力強い味方とともに

 俺とウルシュラ、そしてキーリジアの戦士たちでソニド洞門を再び開通させた。

 すると、ラトアーニ大陸側で待っていたナビナたちが嬉しそうに駆け寄る。


「ルカス!」

「戻ったよ、ナビナ」

「ナビナ~ただいまです!」


 俺離れをしたと思っていたが、ナビナが嬉しそうに抱きついて来た。

 ウルシュラも嬉しそうにしている。


「ふふっ。マスターの表情を見るに、どうやら問題は解決したみたいですわね」

「ますたぁ~おかえりなさいみゃ~!」


 イーシャとミルも嬉しそうだ。

 騎士バシレオスも頭を深く下げている。

 そして、


「すまない、ルカス・アルムグレーン。この恩はいずれ必ず。時機が到来したら、ルナファシアスまで来てくれ!」

 

 と、お礼を述べると、バシレオスは俺たちを見回して頭を下げた。

 そのままソニド洞門に入り、駆け足で先を急いで行く。

 アルシノエたちは知らないのか、黙って通したようだ。 


「よほど困っていたんですね~」

「そうみたいだね」


 騎士バシレオスの強さははっきりしてない。

 だがキーリジア周辺は、しばらく魔物がうろつく心配はないし大丈夫だろう。


「……ところで、ルカス。あの人たち、誰?」

「あぁ、うん。実はね――」




 キーリジアを襲う魔物に対し、俺は冴眼の力を解放。

 アルシノエ率いる戦士たちが驚愕していたが、一瞬の閃きと同時に目に見える魔物を全て殲滅させた。


 一匹残らず見えなくなったことで、アルシノエたちの俺を見る目が一変。

 戦士ギルドの男たちも羨望の眼差しを向けるようになり……。

 俺たちのクランについて来た――というのが今までの流れ。


「では、戦士たち数人が大陸違いのレグリースに所属するのです?」

「そういうことになるかな。イーシャとファルハンたちにとっても、刺激になるだろうしね」

「わたくしはともかく、あのバカにはいいかもしれませんわね」


 ネコたちがどうしたいかによるけど、レグリースもかなり賑やかになりそうだ。


「ふ~ん……その大剣女がウルシュラの姉?」

「何だい、口の利き方がなってないね。そういうあんたはエルフ……いや、少し違うか? まぁ、ウルシュラが世話をしたって聞くし、あたしも是非世話してもらおうか!」


 戦士の男たちはいいとして、ギルドマスターがギルドを離れていいのだろうか。

 しかもギルドに残ったのが俺とウルシュラに絡んで来た男たちなんて。




「ええ? クランについて来る? で、でも、アルシノエはギルドマスターなんじゃ?」


 魔物殲滅直後、アルシノエはクランに入りたいと言い出した。それ自体断ることはなかったが、まさかラトアーニ大陸にまでついて来ると言い出すなんて予想出来るはずも無く。


「あたしはあんたの強さに惚れ込んじまった! 別に永遠について行くわけじゃないし、少しくらいここを離れても滅びはしないさ! なぁ、ウルシュラ」

「そうなんですよ、ルカスさん。アルシノエ姉さまは昔から放浪癖がありまして、ギルドの中に居続けることが無くてですね……」


 ――ということがあり、俺について来てしまった。

 アルシノエの他について来たのは、素行のいい戦士たちが数人ほど。


 彼らの場合はクランが目的というより、観光目的らしい。

 

 戦士たちはアルシノエ以外の女性を見るせいか、かなり大人しく、イーシャとミルもそれほど警戒していないようだ。


 ともかく、このままロッホに戻るにしても夜になりそうだが……。

 そう思っていると、ナビナが近くに寄って来る。


「ルカス。冴眼転移の力は使った?」

「まだ特には。ここに戻って来る前に、力を解放したからね」

「魔物?」

「うん。殲滅の力をね……」

「見せて」


 そう言うとナビナが俺の目を覗き込む。

 じっくりと観察するように見つめるも、小刻みに頷くだけで何も言わない。


 問題は無かった――ということだろうか?


「え、えーと……?」

「……大丈夫。呪いとは別の力を解放しただけだから」

「そ、そうなんだ?」

「だから、次は転移の力を解放して」


 イーシャがいるから呪符でも良さそうだけど。


「呪符じゃ駄目なの?」

「駄目。呪符使いの呪符は消耗品。甘えては駄目!」


 なるほど、呪符も限りがあるのか。それなら無理にお願いは出来ないな。

 そうなるとやっぱり冴眼を使うしかないのか。


「ルカスさ~ん! そろそろレグリースに戻りませんか~?」

「ミル、お腹減ったみゃ。ミューたちもきっと同じくらい空かせているみゃ」


 やはりそうだよな。

 このまま旧都にとどまっても意味は無いし、戻るしかないか。

 

「あん? 何だい? このまま野宿しながら向かうんじゃないのかい?」

「アルシノエ姉さま。それはさすがに無理ですよ~」

「魔物がいてもルカスがいれば平気だろ?」


 ここから徒歩で戻るのはさすがに遠すぎる。

 しかし一度も試したことが無いのに、成功するだろうか? それもそこそこの人数を連れて。


「やってみれば慣れる。だから使う。使ってみればいい」

「そ、それなら、うん……」


 どうなるか分からないけど。

 ナビナの言葉に従って、俺は冴眼による"転移"を解放することにした。

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