第39話 ウルシュラの姉
威勢のいい女性が階段から降りて来る。
その女性はフードを深々とかぶっているウルシュラに気づいたようで、すぐに彼女の名を口にした。
「ウルシュラ。あっはっはっは、久しいねえ! 顔を隠さずとも分かったさ!」
「お久しぶりです、ギルドマスターさま」
ギルドマスター?
なるほど、この豪快な姉御肌の女性がギルドマスターか。
出会って早々にウルシュラを力強く抱きしめるなんて、よほど嬉しそうだ。
ウルシュラへの優しい態度を見るに、ギルドの良心的な存在か。
「元気そうで何よりだよ! ウルシュラ!」
「く、苦しいです~……でも私も同じ気持ちです、マスター」
「マスターと言わず、あたしの名を気兼ねなく呼んでも構わないってのに、相変わらず真面目だねえ!」
「は、はいい~」
ウルシュラが圧倒されてるな。
相当な実力がありそうだが、見ただけでは何のジョブかは分からない。
ウルシュラも頭を撫でられて髪がぐしゃぐしゃにされているのに、よほど嬉しそうだ。
「……ところで、そこの魔術師の兄ちゃんは誰だい?」
「あっ……ええと、私のマスターさんです。あの、ラトアーニ大陸の――」
「ラトアーニ大陸……帝国支配の大陸かい。何でまたそんなところに……まさか……」
うん? 何か睨まれてる?
微笑ましく眺めていただけなのに、何か気でも触ったのだろうか。
「おい、そこの! そこを動くな!!」
「ひっ、はい」
もしかして怒られてしまうのでは。
そう思っていたらウルシュラから離れ、マスターなる女性は足音をさせながら俺に迫って来る。
「あっはっはっは!! そうかい、あんたがウルシュラの拠り所になったんだねえ!」
俺に詰め寄ったかと思えば、ばんばんと肩を叩いて嬉しそうだ。
「はは……ど、どうも」
「ふ~ん? いい面構えだねえ! それにその目……普通の魔術師じゃなさそうだねえ」
冴眼は隠しようがない。
それに対する反応は、さすがはギルドマスターといったところだろうか。
「あ、あの、マスター! そろそろ騒がれそうなので、ここでは――」
ウルシュラの言うとおり、俺たちに絡んで来た輩を含め、ギルド内の連中が俺たちに注目し始めている。こんな人前で目立つつもりも無いし、手っ取り早く話を進めねば。
「あぁ、そのようだね。魔術師の兄ちゃんとウルシュラ。とりあえず二階に上がって来な! 話を聞かせてもらいたいからね!」
豪快なギルドマスターな女性は二階に上がっていく。
話が早い女性のようだ。
「ウルシュラ、彼女はギルドマスター……?」
「ギルドマスターでもあるし、あの、私の姉……でして」
「姉!? え、あの豪快な女性が?」
「は、はい。と、とにかく二階へ行きませんか?」
驚いた。姉御肌のギルドマスターかと思えば、ウルシュラの姉だとは。
全然何かもが違う……いや、強気なところは似てるのか。
「そ、そうしようか」
とにかく、そういうことなら話が通じる相手に違いない。
まずはソニド洞門のことを話して、それからだな。
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