第17話 遭遇・宮廷魔術師辺境特務隊
「ナビナ、君には
「……何かが起きることくらい予想出来る」
「なるほど」
ナビナは妖精エルフ。
もちろん、俺が
そんな彼女に備わる妖精の眼で、どこまで
「ど、どうすればいいんですか、ルカスさん」
「ちぃっ、こいつら……! おい、ルカス! あんたの力で早く――」
使われなくなった転移門。それに気づくのは俺だけじゃなかった。
腐ってもリュクルゴスは賢者。
俺を追い詰めようとしているなら、張っていてもおかしくない。
「元宮廷魔術師ルカス・アルムグレーン! お前がここを使うのは分かっていた。転移門を知るのは宮廷魔術師なら当然のことだからなぁ!」
相変わらずの数でものを言わせる戦術だな。
そして賢者の姿はここにはなく、城に籠って高みの見物。
といっても、賢者には冴眼のような力は皆無。
動かずに報告を待つという、簡単な仕事をしているに過ぎない。
それにしても北の転移門にいるだけでも、十数人。外に出ればそれ以上か。
ウルシュラはもちろん、攻撃力のあるミディヌ、そしてエルフのナビナ。
彼女たちに対し、いつ拘束魔法をかけられてもおかしくない。
「特務の宮廷魔術師か。この前の連中とは違うな」
彼らの格好は宮廷魔術師そのもの。
しかし特務にも、配属方面別でローブの模様が異なったりする。
この茶色の模様は、
「……なるほど。辺境方面の特務隊か」
どうりで話している間の動きに隙が生じているわけか。
辺境方面だと帝都に比べると、脅威となるものは少ないし無理も無い。
「ハハハハ! 辺境だろうと、ルカスのような無用な存在とは格が違う! それに無様にやられたあいつらは特務の
独断での行動か。それならここで何が起きても報告までには至らないな。
「それで、そこの君は」
「オレか? オレは特務隊ナンバー2の……」
「いや、名乗らなくていいよ。聞くまでも無くすぐに終わる……」
リュクルゴスはありふれた宮廷魔術師であろうと、惜しみなく使う。
もちろん、魔術学院上がりが次々と出て来るからだ。
だが賢者が
それが俺にとって時機到来となる。
「はぁ……? 何をふざけたことを……うっ?」
無抵抗な彼女たちを押さえつけようとする動き。
それをわずかでも見せたことで、俺は冴眼で一斉に睨みを利かした。
首を左右に動かし睨むだけ。
たったそれだけだったが、連中はまるで石化したかのように動けなくなった。
「あれれ? この人たち、急に黙っちゃいましたよ? どうしたんでしょう?」
「甘い男だと思っていたけど……光り輝く目。それがルカスのおそろしい力ってわけかい」
「ルカス。連中とその男に対し、どういう感情で睨んだ?」
冴眼は俺の感情を瞬時に"判断"。
敵と認めた相手には、おそらく本来持つ呪いの力を存分に発揮する。
治癒の力は無自覚に効果が表れていることが多い。
だが敵とみなした時、俺の中の"負"の感情を力に変えている気がしている。
「一瞬でもナビナたちに近づくつもりなら容赦しない……っていう感情かな」
俺の言葉にナビナは小刻みに頷く。
大体合っている答えだったみたいだ。
「…………ぅぁ……ぅ」
この場にいる特務隊は息こそしているが、石化状態のまま動けずにいる。
異様な状況にミディヌやウルシュラも戸惑って……。
「ルカスさん、石化っていっても叩いて音が出るわけじゃないんですね」
ウルシュラは戸惑ってないな。
だからって、岩のように叩こうとするのもどうなんだ。
「石化状態とはいえ彼らは生きている。それに、俺は非道に扱うつもりは無いよ」
彼らはこの場に意識を残したまま、活動を封じられているに過ぎない。
俺たちの声は聞こえているはずだ。
しかし、俺がここを離れるまで石化が解かれることはない。
「へぇぇ、確かに固まってんな……でも意識は残ってるか。あんたも容赦ないな、ルカス」
「魔物を相手にするのとは違うからね。それに、死なせなくてもやり方は色々あるから」
「……ふ~ん。怖い男だけど、間違ってないかもな」
この連中にはしばらく石化状態になっててもらうとして……。
外にいる連中をどうにかしないと、帝国に向かえそうに無いな。
「ルカスさん。石化状態で息をしてるなら、気づいた時には食事出来ますよね?」
「それは……」
「ウルシュラの好きにしていい。それでいい? ルカス」
「まぁ、いいよ」
俺の返事を聞いて、ウルシュラはすぐに調理に取り掛かっている。
「ルカスのその目……呪いを与え続けたら駄目」
ナビナはまた意味深なことを……。
とにかく外さえどうにか出来れば、帝国に向かえる。
本当に痛い目を見せる相手はリュクルゴスだけで十分だ。
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