「それが言いたかった事……」




「うん、ずっと言えなくてごめん」




 彼女は変わった。しかし、それは俺の力ではない。




 彼女がそう願ったからだ。




「俺は……何もしてない。後悔してるんだよ。あんな事しなけりゃよかったって……ずっと……ずっと……」




 気に入らないものに当たっただけの、正義感を気取った愚か者だ。




「違う! 少なくても私はあなたに救われた! なかった方が良かった……そんな事言わないで」




 彼女は俺の手を強く握る。




「あなたはやり方を間違えたかもしれない。でも……それで孤立するなんておかしいよ……! きっと私みたいによくないと思っていない人だっている!」




 思っていない人……いるのか、そんな人が。




「いいのか……俺は救われて……」




 彼女の言葉に、仕草に、不覚にも涙が流れて。




 もう目の前も見えていない。わかるのはその握られた手の温度だけ。





「いいんだよ。 今まで辛い思いをしたんだから。 今度こそ幸せになろ?」






 彼女が俺を引き寄せ、静かに抱きしめてくれた。




 彼女のぬくもりが、全身を駆け巡る。




 頭を撫でられて、まるで俺は赤子のようだった。母親のような彼女は、きっと良い母親になれる。





 俺は泣いた。声をあげて泣いた。





 胸の奥にかかえていた物が流れ落ちるまで泣いた。





 彼女も泣いた。つられ泣きだった。






 冬空の下、雪でも降りそうな聖夜の日。






 俺と彼女はベンチで二人、泣き続けた。




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