②
浴衣を身に纏った彼女と二人歩く。
今日は例の夏祭りに来ていた。
彼女ははりきって浴衣を着てきた。いつもと違った服装なので、少し新鮮味があった。
彼女が好物だと言うわたがしを口にする。
俺もそれを横目に同じ物を食べる。
普段はあまり美味しいとは感じないのだが、今日は少し美味しく感じられた。
楽しそうに笑う彼女の姿に、俺はふと思う。
彼女は、俺となんかと来て楽しいのだろうか。
その考えは振り払うことにした。
今の彼女が笑顔なら、それでいい、と。
「そろそろ、花火の場所に移動しようか」
多くの人が行き交う中、俺は彼女の手を握って歩き出す。
「……えっ?」
ふと、彼女が驚いたように声をあげた。
振り払うことなく、握られた手をずっと眺めている。
「はぐれたら嫌だから、少しの間だけ」
このまま彼女を見失うのが、嫌だった。それだけだ。
「う、うん。……そうなんだ」
曖昧に返事をする彼女。
嫌なのだろうか。やはり、俺なんかと手を繋ぐのは。
「……嫌なら、いいけど」
彼女と目が合う。
暗くてよく見えないが、りんごあめのように顔が染まっていた。
「い、嫌なんかじゃないよ。ちょっと、びっくりしただけ……」
瞬間、大きな爆音とともに、空に何色もの閃光が打ち上がった。
まっすぐに弾けて、それは大きな花びらを空に描いた。
その様子に釘付けになりながら、俺はずっと彼女の手を握っていた。
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