浴衣を身に纏った彼女と二人歩く。




 今日は例の夏祭りに来ていた。




 彼女ははりきって浴衣を着てきた。いつもと違った服装なので、少し新鮮味があった。




 彼女が好物だと言うわたがしを口にする。




 俺もそれを横目に同じ物を食べる。




 普段はあまり美味しいとは感じないのだが、今日は少し美味しく感じられた。




 楽しそうに笑う彼女の姿に、俺はふと思う。




 彼女は、俺となんかと来て楽しいのだろうか。




 その考えは振り払うことにした。




 今の彼女が笑顔なら、それでいい、と。




「そろそろ、花火の場所に移動しようか」




 多くの人が行き交う中、俺は彼女の手を握って歩き出す。




「……えっ?」




 ふと、彼女が驚いたように声をあげた。




 振り払うことなく、握られた手をずっと眺めている。




「はぐれたら嫌だから、少しの間だけ」




 このまま彼女を見失うのが、嫌だった。それだけだ。




「う、うん。……そうなんだ」




 曖昧に返事をする彼女。




 嫌なのだろうか。やはり、俺なんかと手を繋ぐのは。




「……嫌なら、いいけど」




 彼女と目が合う。




 暗くてよく見えないが、りんごあめのように顔が染まっていた。





「い、嫌なんかじゃないよ。ちょっと、びっくりしただけ……」





 瞬間、大きな爆音とともに、空に何色もの閃光が打ち上がった。




 まっすぐに弾けて、それは大きな花びらを空に描いた。




 その様子に釘付けになりながら、俺はずっと彼女の手を握っていた。





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