⑥
そのグループを仕切っていたのは、学年でも人気の女。優しいからと、男子からも先生からも評判は良かった。
そして自分もまたそいつを、良い人ばかりだと思っていた。
だけど、ある日見てしまった。そいつが、その子にこんな事を言ったのを。
『アンタに、生きてる価値はないよ』
瞬間、自分の中で何かが壊れた。
気がつけば、身体は勝手に動いて、
そいつの事を殴っていた。
すぐに自分は停学処分になり、しばらく学校を休むハメになる。
担任や両親、クラスの連中に責め立てられ、父親にも殴られた。
そいつにも、その両親にも謝罪をしたが、しばらくしてからどこかに転校してしまった。
やり過ぎたことは知っている。最低だということも知っている。
ちっぽけな正義感で後先考えずに行動した、正真正銘のバカである事も。
それからずっと、目の色が変わったクラスの連中に避けられながら、細々と暮らしてきた。
あの子が、今どうなっているかは知らない。
元々関わりも薄いので、名前も顔も覚えていない。
この学校にいる事は事実だが、会うつもりなど毛頭なかった。
会ったとしても、何も言うつもりはないのだから。
※※※
晴れない曇空。梅雨はまだあけない。
ふと、隣の彼女を見た。
彼女もまた同じように、空を眺めていた。
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