そのグループを仕切っていたのは、学年でも人気の女。優しいからと、男子からも先生からも評判は良かった。




 そして自分もまたそいつを、良い人ばかりだと思っていた。




 だけど、ある日見てしまった。そいつが、その子にこんな事を言ったのを。





『アンタに、生きてる価値はないよ』






 瞬間、自分の中で何かが壊れた。




 気がつけば、身体は勝手に動いて、





 そいつの事を殴っていた。







 すぐに自分は停学処分になり、しばらく学校を休むハメになる。




 担任や両親、クラスの連中に責め立てられ、父親にも殴られた。




 そいつにも、その両親にも謝罪をしたが、しばらくしてからどこかに転校してしまった。




 やり過ぎたことは知っている。最低だということも知っている。




 ちっぽけな正義感で後先考えずに行動した、正真正銘のバカである事も。




 それからずっと、目の色が変わったクラスの連中に避けられながら、細々と暮らしてきた。




 あの子が、今どうなっているかは知らない。




 元々関わりも薄いので、名前も顔も覚えていない。




 この学校にいる事は事実だが、会うつもりなど毛頭なかった。




 会ったとしても、何も言うつもりはないのだから。





 ※※※




 晴れない曇空。梅雨はまだあけない。




 ふと、隣の彼女を見た。




 彼女もまた同じように、空を眺めていた。





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