「何で話かけてくんの?」




「えっ?」




 つい、聞いてしまった。




 気になってしまった。




 クラスで唯一、彼女だけが、自分と普通に話そうとする。その理由がなんなのか、知りたかった。




「えっと、クラスメイトだし……」




 期待した答えは至極単純で。




 つい嫌味を言ってしまう。




「じゃあ、他の人でもいいじゃん」




 少女の周りにはいつも誰かがいる。クラスの人気者。




 それなのに、どうして自分なんかと仲良しようとしている。




 このままだと、同じように変な目で見られてしまうのに。




 それを避けるべきだと思った。




 巻き込むべきじゃない、と。




 あいつに関わるな、あいつは最低だと、言われ続けてきた。




 あんな事がなかったとしても、きっとこうなる運命だったんだろう。




 いくら優しい人でも、自分を助ける事は出来ない。




 そんな優しさは、嫌いだ。




 彼女はしばらく考えてから、こう告げた。





「だって……私とよく似てるから」





 似てる?




 むしろ、正反対だ。




 少し苛立ってしまったせいか、決して言ってはいけない言葉を口に出してしまう。





「あっ、そう。それはいいけど、あんまり関わるのやめた方が良いと思うよ。だって」





 もうこれで、本当に。





「友達でもなんでもない……ただの他人だし」





 おしまいだ。





 彼女に目もくれず、教室を後にする。




 今日は大降りの雨。最近ずっと天気が悪い。




 少し肌寒いこのシーズンも、クラスの連中も、素直になれない自分も、何もかも、




 ───大嫌いだ。



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