タクシードライバー

私は中国のある町に住んでいて、プライベートでよくタクシーを使う。

中国は基本スマホでタクシーを呼ぶ。

ある日、タクシーに乗って、万象ショッピングモールに行く。

車に乗ったら、何気なくタクシードライバーに「最近面白い事ある?」と聞いた。

そしてタクシードライバーは、話を始めた。


「まあ同僚のタクシードライバーの話ですが、その人、夜の方をやっていたんですね。まあ深夜タクシーということ。」

「で、ある日、霊園に行く客を乗せたんですね。アプリで。その客は女性で、何も言わずに車に乗ったんですね。」

「まあ深夜だし、1時くらいかな。あの霊園は周りに何もないんですよ。もう普通の客なわけじゃないですね。」

「そして霊園に着いたら、そのタクシードライバーは車の扉の音を聞こえなかったんですね。後ろを見たら、その客はもういなかったんですね。」

「まあ怖くて、車を出て、周りを見たら、誰もいないんですね。」

「その同僚は本当にビビって、その後はもう夜のタクシー運転をしないってことでした。」


私はそのエピソードを聞いて、「怖い話ですね」と返事した。


そしてタクシードライバーは続ける。

「そうですね。まあ昔は幽霊を乗せたら、料金を貰えなかったんですよ。でも今全部アプリなので、幽霊でも料金をちゃんと払ってくれるんですね。」



「あ、そう」と私が。


「そうなんですよ。有り難いですね、今の時代。だから我々幽霊ドライバーも、ちゃんと料金を貴方たちから取れるんですよ。はい、着きました。」


そのタクシードライバーは振り返って、その頭に、顔はなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る