2時間
H博士は静かに口を開いた。「成功しました。睡眠を2時間減らす薬です。」
国立研究センターの会議室に、ざわめきが広がる。博士は続けて説明した。「この薬は、睡眠の質を高めることで、平均して2時間の睡眠を削減できます。つまり、8時間寝る人は6時間に、6時間寝る人は4時間になる。増えた2時間は、仕事や趣味、スポーツに使うことができるでしょう。寿命を延ばす効果さえ期待できます。ただ…」
「ただ?」偉い人の一人が顔をしかめて問いかけた。
H博士は少し間を置き、慎重に答えた。「全員の生活時間が2時間増えたとき、社会がどう変わるか、どんな問題が起こるか、まだ予測がつきません。ですから、国民全体にすぐ導入するのは慎重にならざるを得ません。」
会議室は静寂に包まれた。新たな技術がもたらす可能性と、その背後に潜むリスクを、誰もが真剣に考え込んでいる。しかし、やがて一人の偉い人が、ふと笑いながら口を開いた。
「まあ、その増えた2時間、結局みんなスマホをいじって終わるんだろうけどな。」
蘇泉's 短編 @sosen
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。蘇泉's 短編の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます