第3話 独り言

夢を見た。遠い昔の記憶。まだ俺が颯斗に対抗ばかりしていた頃の夢。


「くっそー!また負けた!どうすれば勝てるんだよ!!」

「でも今回は前回よりも惜しかったよ!」

「だよな!俺も今回は少し近づいた実感があったんだよ!あの、さ…凛花…」

「なぁに?」

「俺が、さ…颯斗に勝つのをさ…その」

「わかってるよ。ちゃんと。拓磨が勝つのを私は信じてるしちゃんとずっと応援してるよ!だからがんばってね!かっこよく勝つところ私に見せてね!」

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「夢、か。懐かしい夢だったな…」

  夢から醒め、起きると、来てしまった今日に落胆しつつ学校に行く準備を進める。

 交通事故で早くに両親を亡くし、祖父母の仕送りで生活している俺は1人にしては広くなってしまったように感じていた部屋が今日は心なしか狭く感じてしまっていた。

 昨日の颯斗と凛花の交際宣言がまだ頭にべっしりとこびりついており、離れる気配はなく、外の快晴には似つかない心持ちで家を後にし学校へと向かう。

 学校では2人とは別クラスだけどいつも昼や帰宅は3人でしている。でも今日からは昼も帰宅も2人きりで過ごす時間になるだろう。

そんなことを考えながら学校に向かっていると

「拓磨!おはよう!朝から顔色悪いね〜。どうしたの?凛花さんと喧嘩でもしちゃったの?」

 同じクラスで友達の樋口美玲に道で会った。

 美玲とは中学からの友だちで昔から俺の恋を応援してくれている。

 美玲は可愛い系である凛花とは逆な見た目で清楚なお嬢様って感じの美人。

高校では颯斗同様にモテまくりの才女。

 言い寄られることが多く、美玲に接する男子の大半は下心があるのを本人も理解していたため、男子には割と警戒心を持っていて男友達と呼べるのもおそらく俺くらいしかいない。

 美玲も昔から恋人を作らずにいたからこそ美玲にとっての数少ない男友達の俺の恋事情が気になるのだろう。

 以前になんで彼氏を作らないか聞いたことがあったけど「好きになった人は自分の手に届かないところにいたし、初恋だったから次に進めなくてさ」とはにかみながら笑っていっていた。

「ん〜…まぁ、そんなとこかなぁ〜…」

 美玲からの質問に若干誤魔化しながら答えると何かを隠してることに気づいた美玲が深掘りしてきた

「お、なんだなんだ〜?また拓磨が凛花さんを怒らせるようなことでもしたのか〜?ほら、お姉さんに洗いざらい吐いて楽になってしまいな〜」

「お姉さんってなんだよ(笑)。本人に口止めされてるわけじゃないけど広まることは望んでないだろうから広めないで欲しいんだけど実はさ…」

 俺は心配してくれてる美玲に心の中に留めることを条件に2人が付き合ってしまったことを話した。

「え…でも…えっと、拓磨!!!!!ドンマイ!!!!!!!!」

「いやそこはもっと重い感じの空気になれよ!!!!!」

いつものように美玲が軽口を叩いてくれることがきっと嬉しかったんだろう。俺は少し楽になりツッコミと同時に笑いが出た。少し心の暖かさを感じて涙も一筋流れてしまった。

「あはは、ごめんごめん。でも私、本当に拓磨の恋は応援してたんだよ〜。だから〜少し残念。」

「少しかよ(笑)。まぁ確かに美玲が心から応援してくれてたのはわかってたからね。ありがとう。ただ、颯斗なら信頼できるからその点は良かったと思うんだ。前からこの日が来るんじゃないかって思ってたからね。」

「そっか…やっぱり拓磨は優しいね。だったら今度は私の番!拓磨には凛花さんのこと忘れるくらい私に構ってもらうからね〜。どうせ拓磨のことだから今日から2人に気を使って自分は離れるつもりだったんでしょ!なら私と今日から昼も放課後も付き合ってもらうからね!」

「勝手に決めるな(笑)でも、そうだな。俺も今日からどうしようか悩んでたからそうさせてもらうよ。ありがとう。改めてよろしくな」

「うん、よろしく!感謝なんて必要ないよ(笑)私だって拓磨と過ごせるの楽しみだし!」

「あはは、美玲は友達少ないもんな」

「少ないんじゃなくて作らないんです〜!そんなん言うなら慰めてやらないぞ〜」

「ごめんって(笑)」

そんな風に軽口を叩き合い、美玲とあって気持ちが軽くなったことに感謝しながら学校へと向かった。


「…失恋しちゃったのは可哀想だけど嬉しさの方が大きいかも、とか、言ってみたりしちゃって…」






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