暗闇の中で僕は
Edy・Sixones
第1話 暗闇がそこにいる
あれはゴールデンウィーク明けのことだっただろうか、いや6月に入っていたかもしれない。
世界的パンデミック、新たなウィルス。僕の生活は一変して在宅ワーカーになってしまって、仕事とプライベートの境界線は曖昧になっていた。
もはやルーティン化された業務を遂行し、腹が減ったら飯を食べ、夜の12時頃に寝る。息が詰まるような、そんな感覚。そりゃあ病気にもなるよなこんな生活。在宅ワーカーのうつ病が問題になっているとかいないとか。仕事に支配されるような日常、感覚。あぁ、在宅ワークが決まった時に喜んだ自分を殴ってやりたい。こんな生活もう嫌だ、嫌だ。僕は嫌だ、なんてどこかのアイドルが叫んでたっけ。名前なんか覚えてないけれど。
そんな日だった。
何気なく過ぎ去る日常だと思い込んでいた。
くだらないって笑い飛ばせたら、良かった。
小心者の僕は心の中でしか世界に喧嘩を売ることが出来ない。ギッタンギッタンにして丸めてポーイ、なんて。
出来たら、いいのに。
ピンポーン。
部屋のインターホンが鳴り、訪ねてきたのは寂しい生活を送る僕の唯一の親友だった。
「…急にごめんね。」
いつも元気な君の声が沈んでいた。表情も暗くて上手く読み取れない。掠れて、抑揚がなくて、生気の感じられないような声で君が紡いだ一言に僕の時は止まった。
「会社に行けなくなったんだ。」
え、君が。
信じられなかった。
いつも笑っていて。毎日楽しそうに過ごしているような君が。
「そっか。」
僕はそう言うことしか出来なかったように思う。
「疲れちゃった。」君は言った。「楽になりたい、消えたい。」
そう言った君の瞳の中に暗い闇を見た。
「それは絶対に許さない。」僕は言った。「独りになんてしないから。僕がいる。」
君は静かに肩を震わせながら俯いたままだった。
君が泣き止むまで、夜明けまで。
僕はずっと抱き締めていた。
君が泣きつかれて、眠りにつくまで。
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