黒く爆ぜて超えしは -9-
————————————
【RESULT】
EXP 123500
GAL 45900
TIME 13’12”09
DROP ”黒蠍の鋭呪爪×3”、”黒蠍の堅呪殻×4”、”黒蠍の呪鋭針、”異形黒蠍の鋭呪爪×3”、”異形黒蠍の堅呪殻×5”、"異形黒蠍の呪鋭槍針"、”呪獣の黒真魔核”
【EX RESULT】
称号【異形化せし黒蠍を討ち倒し者】を獲得しました。
称号【部位破壊の達人】を獲得しました。
————————————
聖女の雫とライフポーションをインベントリから取り出し、順に飲み干せば、獣呪が解呪され、九割がた消失していたHPバーもすっかり元通りになる。
「ふう、なんだか色々とヤバかったけど……どうにか乗り切れたな」
昼に大金叩いて聖女の雫を買っておいて正解だった。
じゃなきゃ、短期決戦に持ち込めずに色々とジリ貧になっていた気がする。
脱皮直後で甲殻が軟らかくなっていたとはいえ、二分程度で撃破まで持って行けたのは、シラユキからの諸々のバフ、白闇狼との共鳴による全パラ上昇、それと呪獣転侵による強力なステータスブーストが重なったからに過ぎない。
特に呪獣転侵によるステブーストが無きゃ、途中で白闇狼との共鳴の効果が切れて火力が大分落ちるっていうか悲惨な事になってたはずだ。
なんだかんだでレベル的に格上の敵って事には変わり無かったわけだし。
それと黒蠍のあの形態変化の仕方を見るに、コヨトルズと初めて戦った時みたく、どっちの黒蠍もある程度均等に殴っておいたのも正解だったとも思う。
じゃなきゃ、よりパワーアップを助長させる結果になってただろうな。
多数を相手にする時、弱い奴から先に潰すってのは常套手段だ。
だけど、こいつらの場合は多分どっちも同じくらいの強さな上に、一気に削り切らないと失敗した時のリスクがデカいから、集中撃破が悪手になりかねないって罠だよな。
つーか途中、シラユキが刺された時はガチで肝を冷やしたぞ。
おかげでいつもよりテンションの上がりようが酷くなってた気がするが、まあ結果的に倒せたからよしとするか。
なんてつらつらと考えていると、
「——ジンくん」
シラユキが口元を弛ませ、覚束無い足取りながら、ゆっくりと俺に近づいて来る。
「えっと……GG」
それから少し気恥ずかしそうにしながらもシラユキは、そう言ってはにかみ、片手を挙げてみせる。
——へえ、シラユキの方からなんて珍しいな。
けど、なんだかちょっと嬉しくもある。
「……ああ、GG」
俺もふっと笑みを溢し、片手を挙げハイタッチを交わす。
パンと小さく音が響いた、その時だった。
「あ、れ……?」
シラユキがいきなり膝から崩れ落ちた。
地面に両膝を付ける前に咄嗟に腕を掴み、
「——っと、おい大丈夫か!?」
「うん、平気……って、言いたいけど、ごめんね。ちょっとキツいかも」
申し訳なさそうにシラユキは苦笑を浮かべる。
「さっきあの蠍のエネミーにお腹を刺されてからね、ずっと緊張で心臓がバクバクしちゃってるんだ。ついさっきまでは、なんとか踏ん張んなきゃって、頑張って持ち堪えてたけど、もう大丈夫なんだって安心したら……あはは、こんなになっちゃった」
「はあ……ったく、無理しやがって」
シラユキがどうにか気丈に振る舞っていたのは分かっていた。
それでも今の今まで持ち堪えられていたのは、アドレナリンが分泌しまくってたのもあるんだろうな。
メニューを開き、ステータスを確認する。
まだ出発前に食った料理の効果時間はちょっとだけ残ってはいるが、このまま危険地帯に踏み込むのは無謀でしかねえか。
「とりあえず、場所を移してもう一回休憩すんぞ」
二度目の休憩の提案。
黒蠍と戦う前は進行が遅れるからと大砂漠縦断を強行しようとしていたが、流石に今回は限界に達していたからか、観念したように、
「……はい、よろしくお願いします」
おずおずとくぐもった返事が返ってきた。
「じゃあ、オアシスまで移動するから背中に乗りなよ」
「へ……ええっ!?」
「だって、シラユキお前、今まともに歩けないだろ」
指摘すれば、シラユキが「うぐっ」と声を詰まらせる。
「それは……そう、だけど……」
「嫌なら担ぐことになるけど」
「えっと、それは勘弁して欲しい……かな」
言って、シラユキは苦笑いする。
「じゃあ、背負って行くぞ。またおんぶされて嫌だろうけど、ちょっとの間だけ我慢してくれよ」
「ジンくん」
「なんだ」
背中を向けながら訊けば、
「……ううん、なんでもない。えっと、その……うん、お願いします」
耳元でか細い声が囁いた。
(——っ!!)
さっきの戦闘とは比にならないレベルで心臓が強く脈打つ。
が、それを表情に出さないよう必死に務め、俺はシラユキを背負い、この場を後にした。
————————————
虚呪の黒蠍
巨大な蠍型エネミー。甲虫種や鋏角種等のエネミーが黒の獣の呪いを受けると共通してこの姿に変化する。
虚呪の黒蠍は他と比べて複数同時に眷属化しやすく、雄と雌が一緒になると行動を共にする特徴がある。雌が命の危機に陥ると、雄の魔核を喰らって生き延びようとする。その際、雄は雌の発するフェロモンにより抵抗の意思が無くなり、雌のなすがままになる。それと配偶行動後、雄がその場を離れるのに失敗した場合も同様に共喰いされる。
雄の魔核を喰らった雌は、雄の魔核に蓄えられていた魔力に刺激され、脱皮と共に異形の怪物へと姿を変えるようになる。
異形化すると、全ステータスが大きく上昇し、サイズが二回りほど巨大化する事で攻撃範囲も広くなるが、代わりに脱皮直後は大幅に耐久が低くなり、甲殻は脆く軟化してしまう。時間経過で徐々に硬くなっていくが、完全に硬化するまでには七分三十秒の時間を要する。雌が異形化した際のステータスの上昇幅は、雄の残りHPに比例する。
第二形態に移行する際の流れを簡単にまとめると、
♀「いった〜い! このままだとわたし、ころされちゃう〜!」
♂「くっ……なかなか厳しい相手だ……! ここまで苦戦させられるとは……!」
♀「うーん、どうしよ〜……あっ、そうだ! いい方法思いついちゃった☆ ねえ、♂くん……」
♂「どうした、♀ちゃん?」
♀「あのね……えっとね、その——力を寄越せ。私の餌になって、私を生き永らえらせろ」(隷属化フェロモン発散)
♂「……はい。貴女様の仰せのままに。我が命、貴女様に捧げます」(目のハイライトオフ)(意思&行動自由剥奪)
〜共食い&異形化開始♡〜
みたいな感じです。
まあ、形態変化なんて滅多に起きないんですけど、はい。
あと面倒な仕様なのですが、形態変化条件が整った時、HPの少ない方の個体が雌判定になり、HPの多く残っている方が雄判定が付与されるので、先に一体を集中撃破する時は、確実に絶対きっちり倒し切りましょう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます