第41話・決着
突如として真っ白になった意識の中で、最後にそんな言葉が聞こえた気がするが、よく思い出せない。 ただわたしは大空を待っている。 それはそんなに不思議ではない。
なぜなら私は風の戦乙女―――シルフィード。 意識が風に溶けていくように、デジタルの波に飲み込まれていく。 風圧が強い、ただ体に纏う風の音が流される意識を覚醒さる。 風に……私は風になりたい―――!
『風が集まる』
目覚めた私が目にしたのは、頭の中で暴風の渦を巻く電子魔力の放流。
意識すれば体を流れるその流れを、自由にコントロールすることができる。
「どうしましたの、戦闘中に目など閉じて、死を目前にしてあなたのナイトの状況でも確かめているのかしら?」
「違うわ、イグニス。 私が見ていたのはわたし自身、あなたが見たがっていた私のヴァルキリーとしての資質――見ていたのよ私自身を……
思う存分に味わうがいいわ目覚めたばかりのヴァルキリーとしての力を!」
「ふふふ、強がるの結構ですけれど、精霊の力を操るのはそう容易なことでではありませんことよ。
何度も変身を繰り返し、熟練してこそ乗り越えることができる最初の壁、今のあなたにはまだ早すぎる技能ですわ!」
イグニスが槍を突きつけたまま嘲笑する。 だが、確信がある、それを今から形にして魅せる時だ。 私どこにでもいる平凡な少女だけど、ヴァルキリーシルフィードは違う、彼女が負けるわけがないと、わたしは信じている。
「じゃあ、証拠見せてあげるわ。 予言する――あなたが倒れる姿をね!
精霊の力―――その証拠を身を以て体現しろ!」
右手に銃を召還する。 同時に体中を渦巻いていた風の流れが右腕へと集中する。
魔力が集中することで感じる熱が右手を奮い立たせる。
風の魔力を込めた三点バーストを打ち出す――弾丸は真空の弾層に包まれ、これまで私が体験したいかなる攻撃よりも加速する。
「なっ―――!?」
イグニスが驚き目を見開く、咄嗟に槍で防ごうとするが遅い。
真空の弾丸が旋風を伴い立て続けに 彼女の胸に突き刺さる。
何度攻撃しても、ろくに傷つかなかった分厚い鎧に三つの穴を穿ち、衝撃に耐えきれず鎧にヒビが入る。
イグニスは驚愕に目を見開き、予想を超える事態に対応できずにいる。
このチャンスを逃すわけにはいかない。 立て続けにナイフを銃剣にして斬りかかる。
風によって鋭利さを増した銃剣が真空波を放ち、イグニスの胸部プレートを完全に破壊した。
「うぐっ!」
「これで終わりよ!」
銃を投げ捨てると同時に真空の刃を光線剣を纏わせ、全力で力の限り切りつける。
白刃は真空の断層をともない、イグニスにとどめの一撃を叩きつける。
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