第39話・反撃へ

 今の私を突き動かすのは、親友に裏切られた絶望と、葵を奪ったイグニスに対する憎悪によるものだ。


 怒り、妬み、懐疑、そんな感情を奮い立たせ絶望を押し流す。


 絶望を認めてしまえば、もう立つことはできないだろうから。


 そうなれば葵は二度と戻ってこないような気がする。




 そうだ、私は負けを認めるわけにはいかない! この先、三奈坂七瀬として生きるために、絶対に葵を連れて帰るんだ。 友情を糧にして、全身を奮い立たせる。


「何度やっても同じことですわ。 精霊の力を扱えないあなたとわたくしには決定的な壁がありますの。


 それでなくてもあなたには戦闘経験が不足しているのでしてよ。 その差は戦略で埋まることなどあり得ない、絶対の差ですわ。 ヴァルキリーとして戦う者の不変真理。


 瀬川の名にかけて誓いましょう、あなたではわたくしには適わない!


 もういい加減に諦めたらいかがですの?」




「じゃあ、聞かせてもらうけど、あんたはどうやって精霊の力が使えるようになったの?」




「ふふ、それこそ愚問ですわ。 精霊による力はヴァルキリーとしての経験がものを言いますの、経験とはヴァルキリーとしての自身に極め肯定すること。


 昨日今日でヴァルキリーになったあなたにはその資格はございませんわね」


 私に穂先を突きつけながら、イグニスが嘲笑する。




 もはやその挑発に気を取られている場合ではない。


 この状況を打破するためには精霊の力を使うほかにない。




『シルフ教えてよ、どうすればあんたの力を使うことができるの? あいつが言ったとおりヴァルキリーとして経験を積むほかに方法はないの?』




『ヴァルキリーの強さを決める要素の一つとして、ヴァルキリーとしての練度がある。


 これは単純な慣れという問題ではなく、守護精霊の力をどれほど引き出せるかと言う潜在的問題に直結し――』




『戦闘中に長ったらしい解説してくれなくていいから、結局のところ方法があるならそれを教えてよ!?』




『精霊による助力はその者が持つ資質により左右される。 できない者には一生かかってもできん。 私達精霊はその適正をある程度ならば見極めることができる。




 君にはその資格があると私が補償しよう。 しかし、それがいつ開花するかは私にも予測することができのだ。




 強いて言えばトリガーとなるのは、強い思いと精神力、そしていかなる動機をもってヴァルキリーとして戦うことを望むのかというあり方と願い。 その力を信じ肯定すること』




『つまり強い思いと動機で精神力を奮い立たせればいいってことね。


 いいわ、もうヤケクソね、やれるだけやってやるんだから!』


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