第36話・好転

 先程の手榴弾にしてもイグニスは炎の鎧に包まれたているとはいえ、即座にまき散らされた 爆風の威力は殺せない。


 だが、ダメージが大きいのは手放してすぐに爆発させた私自身だ。


 


「全く、葵のやつ何考えてあんたなんかの味方してるよ!?」




「それはあなたがご自分の親友に直接尋ねてみればいかがですの?


 わたくしに聞かれても困りますわ」




 もう一度手榴弾を投げつける。 イグニスが火球を作り溶解、それをに対抗する。


 その瞬間を狙って横飛び即座にサブマシンガンを三点バースト――手榴弾は炎に飲まれて消えるが、別の軌跡を飛ぶ弾丸が無効化されない。 イグニスが回避行動をとる。 だけど、逃がさない。




 最大加速で追撃、フルオート掃射を浴びせかけ、サバイバルナイフで斬りかかる。


 イグニスは再度火球を作り出す時間がないと判断したために、炎を纏った槍を振り回してこちらの突進を牽制する。




 炎によって伸びるヤツのリーチは二メートルどころではない。


 銃口からは走る弾丸は槍の一振りで炎に大半が溶解されてしまうが、一部がイグニスの鎧に命中する。




 たいしたダメージではないだろうが、衝撃でバランスを崩す。


 その隙を狙いナイフを、彼女の右手、槍を持つ腕に向かって投擲。




 バランスを崩しながらもそれを払いのけるイグニス、彼女が振り払った槍に、サバイバルナイフのコンテナから伸びたカーボンナノ繊維が巻き付く。




 カーボンナノ自体が未だ実用例が不明瞭なのだが、レーザーブレードが召還できる事を思えば、これもありだろうと試してみた。




 ただし強度とか特性については不明、ちゃんとしたものになっているのか、いまいちよく分からない。 とりあえず引っ張ってみてもそう簡単に切れなかった。




 銃を持ち替えもう二本目のナイフも投げつける。


 イグニスは槍を振るおうにも、糸が絡まっているので逡巡する。


 仕方がなく槍を地面に突き刺しあいた手でナイフをつかみ取る。 たいした反射神経だが、当然そちらにも糸が仕込んであるのでそれが残りの腕に絡まる。




 ついでにいうと、糸は私の髪の房のツインテールと結ぶ紐に予めつなげておいた。


 そのままバックスステップしつつ短機関銃をのフルバースト銃弾の雨あられ喰らわせる。


「―――なに、って!? きゃあああああ―――!」




 こちらに引き寄せられるイグニス弾丸が直撃する。 衝撃で吹っ飛ぶイグニスは、しかし、糸に引っ張られているので体が固定され、衝撃が逃がせずに通常以上のダメージが入る。




 この後に及んで私が選んだ戦法は奇策、予測されない不完全な曲芸だ。




「きゃああああ! 卑怯ですわよ、この! この! この糸をほどきなさい! ほどかないと後で酷いですわよ!」




「敵にかける情けなどあるか! 負けを認めてひざまずけ、この炎女!」




 ナイフが二本ともイグニスに絡みついているので、坂崎自慢のレーザーブレードを召還し両手に構える。 どうせあいつが持ってても銃剣にしかならないし、いいよね。




 ついでに言うとレーザーブレードが召還できたので、坂崎はまだ死んではいないらしい。


 サブマシンガンよりはこちらの方が攻撃力が高いので、一撃で勝負をつけてやる!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る