第34話・エース

 イグニスを捕らえたのはまさに必殺の一撃だった――!


しかし、肩口を押さえた、憤怒のヴァルキリーが立っていた。




 


 手はずでは当然、急所である心臓もしくは頭を狙うはずだった。




 だけど結果は片腕一本討ち取るにとどまった。 アンチマテリアルライフルの直撃を受ければ、衝撃はすさまじく、たとえ、片腕命中したとしても、左腕ごと振動をもっていきかねないのだけど、イグニスは鎧の片腕を吹き飛ばしただけだった。




『ちょっと、なんでしくじったの?』




『うわああああああ! 高橋さんが―――わあああああああ! 来るなああああ!』




 返答として帰ってきたのは、坂崎の絶叫。 そこで会話が途切れる。




「よくもやってくれましたわね!貴女ごときに、片腕を――許せない、片腕の痛み、必ず公開させて、あげます!




「私のキャバリア―に貴女のキャバリアーをさがさせていたのだけど、どうやら失敗したようね。もう、数秒おくれていたらあぶなかったですわ、ええ、貴女如き片腕でじゅうぶんですものね」




『ちょっと坂崎、応答しなさい! 今どうなってるの? 状況を報告して!?』




 ―――が、返事がない。 考えられる可能性はすでにやられてしまっているか、応戦に必死で返答する余裕がないかどちらかだ。




 後者だったらいいよね。 前者だった場合ナイトまでこっちに転移してきて、よけい不利になってしまうのわけよ。 私の護るんだったら、敵の足止めぐらいしてみなさいよ。




「あなたのナイトって葵なの?」

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