第2話「魔王がいないってマジですか?」
アルトレラ皇国に入国したが、国にの中は中世ヨーロッパ風の街並みという異世界系定番の街並みとなっていた、
そしての街の中を時々白銀の鎧を身に纏った兵士が歩いている、巡回の様なものなのだろうか、歩いている国民たちと言い、この兵士といい、この世界においては中々に発展しているのではと思えた、
「さて、入国はしたがまずは金を手に入れねぇと」
そう、まずは何をするにも金である、その為金を稼ぎたいのだが、
「この世界の貨幣経済ってどうなってんだ?」
そもそもの話、俺はこの世界の住人ではない、だからこの世界の貨幣経済で利用される貨幣が硬貨なのか紙幣なのか、はたまた元の世界の時のように両方なのか、それすらわからない、
「この世界の金を少しでも手に入れられれば無限に増やせるんだがな」
だが、男は少しでも金が手に入ればその形状を後は想像しただけで、無限に増やせる、つまり少しでも金が手に入る=無限の資産ゲットなのだ、
「でもどうやって稼ぎを出すかだ……」
一応方法は一つ思いついてはいる、然し、一部この世界においては賭けになる要素もある策だ、
「まあ物は試しってことでやるしかないか」
そう決意すると男は怪しまれない様に気を付けながら、路地裏に近い場所を探す、周りから見れば明らかに挙動不審だ、
「ここら辺りなら大丈夫そうか?」
男は偶然見つけたら家の隙間となり路地裏へと続く細道になっていた場所に入った、男は狭い周囲を確認し人の目がないことを改めて確認すると、
「よし、それじゃあやりますか」
男は手のひらを出し手一杯に出る金塊を想像する、すると男の手のひらには本当に金の延べ棒が三本程現れた、
男がしようとしている作戦とは、
「おお、、やっぱ出せると思ったけど実際に出てくると存在感すごいな」
金の延べ棒、純度100%の金の塊である、これを売れれば相当な金にはなるだろうが賭け要素というのは、正にその売るということなのだ、
この世界における鉱石や宝石の価値バランスがまだ分かっていないので、もし金鉱石というのがこの世界では低価値の鉱石であった場合、売った所であまり足しにはならない……
「とりあえずその全ては売ってみなければ分からないってところだな、よし急いで売ろう」
男はズボンのポケットに金の延べ棒をしまうとなるべく怪しまれないように自然且つ違和感がないように路地裏を出た、
そのまま道なりに歩きながら周囲の人を見て売り相手になってくれそうな人物を探す、
なるべく人混みの中では取引をしたくない、周りに見られた場合の誤解を防ぐためだ、
「とは言っても中々そう都合のいい人は見つかるわけないよな……」
やはり何処もある程度の人だかりができており中々取引相手が見つからない、、少し焦りながら歩いていると開けた場所に出た、
中央が盆地の様に僅かに凹んでおりその中心に巨大な噴水がある、その周りにも壁泉や木々、花などの自然で装飾され、
その広場周りの建物に木々からつなげられた旗飾りが風ではためく、周囲の建物には出店が出ており一種のバザールの様な景観を作り出していた、
「まるで芸術都市だな……」
男はその美しい広場に目を奪われたかけたが、直ぐに本来の目的を思い出した、
「いかん、早く金を手に入れないと本格的にヤバい……」
何故こんなに男が金を欲しがっているのかと言うと、転移してから約2時間、何も口にするどころか、水すら飲んでなく、空腹がひどいのだ、
「そもそも転移したのは元の世界で夜深夜二時過ぎ、ここまで来るのに結構かかったし、急がないと」
いけない、バザールに出ていた食べ物から出たのだろう美味そうな匂いを嗅いで空腹が限界を突破しそうだ、、
「急げぇ……このまま折角異世界きたのに餓死で死にましたとか、シャレにならん……」
然し、男の思惑とは裏腹に中々取引相手は見つからない、そしてそこで男は自分自身のあることを思い出した、
「そういや、俺……コミュ障だった、」
コミュ障・・正式名称:コミュニケーション障害という、
簡単に言えば対人での会話が苦手という奴である、
男自身そこまで重度のコミュ障では無いが、二人以上の輪に入っていくことが苦手なのだ、
男はその事実を思い出し、自分自身に落胆しながら、本気で「ああ、俺、折角来たけどここで死ぬんだ……」と思い始めた所で、希望に出会った、
よろよろと歩いて広場を抜け、奥の食事処や普通の店が立ち並ぶ商店街だと思われる場所を歩いている時、ふと、男の目にある看板が入ってきた、
「
《圧倒的信頼の等価交換!!》
と書かれていた勿論日本語では無い異世界語?と言われる奴だろうが、、等価交換、つまり同価値の物又は貨幣による交換である、
まさかここで異世界系あるあるが役立つとは思わなかったが助かった、然も交換ショップということはきっと店員と客のマンツーマンによる取引、、これなら俺もできる!!と、勇気だして男は《
「いらっしゃい!!」
中には褐色肌の若旦那といった風貌の店員と、裏方でわたわたと働いているスタッフが出迎えた、男は店内を見ながら先程の褐色肌の店員の元に歩いた、
「お客さん、見ない服装だね、旅人かい?」
店員は気さくに話しかけてくる、男は「まあ、そんなところだ、」と当たり障りない返答をしていると、店員は興味深い顔をしながら男を見た、
「ほう……一人旅で……珍しい奴もいたもんだ、」
店員の反応が気になり男は「一人旅がそんなに珍しいのか?」と聞いてみる、すると店員は「いんや……」と言って言葉を続ける、
「ただ、その軽装の上に背中に剣一つで一人旅する奴ぁ、珍しいもんだとおもってな、」
店員の答えを聞いて男は納得した、そりゃそうだ、旅をしていると言っていたのにそれにしては旅荷物も持たず剣一つで放浪する、珍しいことこの上ないだろう。
「まあそうなのかもな……それでここで現金と交換したい物があるんだがいいか?」
男は、これ以上詮索されるのは不味いと思い、さっさと話題を移す、店員はその焦り気味の交渉に目を開き、満足気に指を鳴らした、
「お!、お客さんいいねぇその気概、もしや、高価な物でも交換しに来たのかい?」
店員の言葉に「ああそうかもな」と男は返す、店員はその言葉により熱意をもって話し始めた、
「やっぱりか!お客さん良い店を選んだな!、うちの宣伝文句は《圧倒的信頼の等価交換!!》だ!、高価な品でもしっかりと査定して妥当な値段で返金するぜ!、」
男は店員の話を聞きながら「じゃあこれを頼む」と金の延べ棒を三本取り出し机の上に置く、その途端、
「……あぇ?」
「ん? どうした?」
「……」
「?? おーい」
店員は金の延べ棒を前にフリーズした、
予測よりもあまりの低価値の品に困惑しているのかと思い、金は期待出来ないなと思っていると、店員は重々しく口を開いた、
「えーっと……お客さん、俺の目がおかしくなってなけりゃ、目の前にはかなりデケェ金の延べ棒があることになるんだが……然も三本も……俺の目はおかしいか??」
店員の冗談を確認するようなおかしな問い掛けに、男は平然と対応する、
「いや、おかしくないぞ、これは純度100パーセン──」
「純度100!?」
店員のいきなりの大声に男だけでなく裏方にいたスタッフまでもがカウンター
を覗きに来ている、
「な……なんだ?、そんな珍しいのか?」
「珍しいのかって……いいかお客さん、そもそも金鉱石ってのは採掘量が極端にすくねぇから純度100の延べ棒なんて作ろうもんなら、小石みてぇなのが1個で限度なんだよ……」
店員からの思ってもみなかった回答に、男は驚く、
「そ、、そうなのか?」
「そうなんだよ!!だからこんな立派な金の延べ棒なんて普通は出来ねえ……お客さん、アンタ……詐欺じゃあねぇよな?」
あまりに予想外なのか、店員のガラっぱち口調が余計にましている、然し心外だ、これは一応本当に純度は100%の金塊なのである、
「そんなことする意味もないよ、本当に純度100%の金の延べ棒だ、調べてもらっても構わん」
店員は男がはっきりとそう言った事で、深々と頷き口を開いた、
「なるほどな、確かに今のお客さんの話に嘘はなさそうだ、うちは信頼が売りのくせにアンタを疑っちまった、悪ぃな」
店員は平謝りをすると、改めてに金の延べ棒をまじまじとみる、そして男に視線を戻さず何か難しい顔している、
「然しこれは……白金貨10はいるな……おい!! 店内金庫から白金貨10枚持って来てくれ!!」
店員の声に驚愕の顔をした裏方のスタッフは急いで金庫へ駆け出した、その様子を、唐突過ぎて固まって見てた男は気を取り戻し、急いで店員に言う、
「いやそんな大金は……」
「何言ってんだ!こんな大量の金塊もらうってんだ10枚はもらってもらわねぇと、、いや10が嫌ってんならせめて5枚はもらってくれねぇと……俺らがバチ当たっちまう!、」
店員はそう言っているが、そもそも男は、、
「あの……すまないが白金貨?とやらは、どれだけの価値があるんだ?」
それを聞いた店員は口を開いたまま、固まってしまった、
「ああ、あの?」
「いや、お客さん? アンタ世間知らずにも程があるぜ?」
「すまない……」
返す言葉もない、実際にこの世界では世間知らずそのものだし、ここまで騒がせてしまったのだから、
「はぁ……わかった疑っちまった詫びだ、俺が硬貨のこと教えてやる」
「おお本当か!ありがたい、」
教えてもらえるのはとても嬉しい、今のままだと詐欺にでもあったら一瞬で金を失いそうだからな、まあ直ぐに増やせるから失ってもいいのだが、
「はぁ、、そもそも硬貨は石貨、銅貨、銀貨、金貨、白金貨、栄誉硬貨、に分かれる」
「ほうほう、」
「んで、銅貨は石貨千枚分、銀貨は銅貨五枚分、金貨は銀貨二枚分、白金貨は金貨百枚分の価値がある、そして栄誉硬貨ってのはちょっと特殊で、国がその個人に直接授与するもんで、一応硬貨だが記念品的な意味合いが大きい硬貨だ、価値は白金貨と同じだしな」
「なるほど」
つまり日本で考えたら、石貨は一円で銅貨は千円、銀貨は五千円で金貨は一万円って所か、てかそう考えたら白金貨って一枚……百万円!?
「高っか……」
「なんかいったか?」
「あ、いや……」
いかん、独り言が聞こえるところだった、てか、そう考えたら今店員は白金貨を10……少なくても5枚は俺に渡そうとしてる……つまり少なくても……五百万!?!?
「おい……」
「(うそだろ、、俺そんなにもらっていいのか?)」
「おい!」
「あ! はい!」
独り言に沈みそうになったところで店員が何かが入った布袋を渡してくる、
「ほら、白金貨が10枚入ってる、こんな大金、一個人に渡すなんて初めてだ……」
「いや……別に5枚で構わない……てか言ってしまえば1枚でも、、」
そう言って男が渋っていると店員は最早呆れた顔をしながら、半ば押し付ける様に男に白金貨の入った布袋を渡した、
「あのなお客さん、欲がないことはいいことだが、中にはもらってくれた方が上げた側の精神衛生上にいい事だってあるんだぜ?」
「あ……はい」
なんか店員がもらった瞬間から肩の荷が下りた様に、凄く穏やかな顔をしている、、
「あ、じゃあ最後に聞いてもいいですか?」
「なんだ?」
ちょうどいい、やはりここは異世界、つまり魔族や悪魔といった脅威があるのかもしれない、だったら俺はそれ倒して英雄になるのだ!、
「この世界に魔王はいるのですか?」
目を輝かせながら渾身の質問をぶつける、きっと何処かに魔王がいてこの世界の人間を脅かしているに違いない!!
と、男は思っていたのだが、店員から帰ってきた言葉は男の望んだ答えからはかけ離れたものだった、
「魔王って、なんだ?」
「……え?」
「悪いが魔王なんて奴ぁ生まれてこの方聞いたこともないぜ?」
そんな……折角異世界に来たのだから、魔王を倒して英雄扱いされて色んな国にちやほやされて、、そんな夢があると思ったのに……
男は一気に膝から崩れ落ちる、
「お!! おい!! 大丈夫か!? お客さん!?」
あれ? なんか、力が入らない……ああそっか、そういえばここ来た理由って、飯食う為に金に換えにきたんだった、ああ、ヤバい意識が……
男は意識を手放していく中でただ一言放った、
「魔王がいないってマジですか……」
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