異世界魔装列車旅行記

神無月《カミナキツキ》

序章:異世界転移成功

第1話「異世界転移成功キタコレ!!」

 ネットでは日々様々な都市伝説や噂が流れている…

 俺はその中でも目を惹かれる物を見つけた、


 ―異世界への転移方法—


 そう、よくライトノベルなどで見られるである・・

 方法は簡単、紙に「世界」と書き、その上下からバツ印を書いた紙で挟んだ物を握り、目を瞑り強く転移したい世界&どういう自分としてその世界で生きたいか想像するのだそうだ、本当か?まあ大抵は噓だろう、基本ネットの噂や都市伝説など、その程度のものだ、だが興味本位でやってみるのもではないだろうか?


 やはり剣と魔法の世界を望んでしまうのは仕方がないだろう、パラレルワールドの様な世界も行っては見たいが、自分の世界に無い物が存在する世界の方がやはり見てみたい。

 さて転移したい世界は想像した、今度はそこでどういう自分として生きるかだ。

 そうだな、あるあるの最強にはやはり惹かれてしまう、だが、具体的に最強とはどうすれば最強なのだろうか?


 周り認める程の実力?違う、

 世界を救う英雄になる?違う、


 やはり自分が自分自身を最強と認められる事だろう、そうすれば例え別にさらに上が居ても自分の中では自分が一番なのだから、何?独りよがりだと?別にいいではないか、って俺は誰に話しているのだろう、まあとにかく、自分の思う最強を想像していこう、


 まあ魔力が世界で一番持っているとかはベターだよな、あとは近接格闘に長けているとか、剣術が神がかってるとか、想像したものをその場に召喚するとか、万物を生み出せたり、森羅万象を操ったりとかか?、後は、、、自分に好きなだけバフをかけれたり、時を操ったり、てか待て、世界を操れるとかだったら一番強くね?てか最早それは神じゃん……


 流石にやりすぎかな……いや別に迷信だろうしいいか、

 このまま目を開ければ今まで見てたPCのある俺の部屋が出るだけだろう、


 ────


「と思っていたのが五分ぐらい前の俺だ……」


 男の前には何も無い鮮やかな緑色の平原が広がっていた、


「目を開けば前に広がっていたのは緑色の色鮮やかな平原、そして……」


 と言って先程転移した直後に直ぐ出した鏡に映る自分の容姿を改めてみる、、

 鏡に映ったのは現代の自分とは似ても似つかない若返った自分だった。


「俺ってこんなに若かったっけ?」


 いやいやそんなはずない……

 リアルの俺は30過ぎても彼女の一人も作らない三十路野郎のはず、なのにこの目の前に写る青年は何だ、若々しくて若干筋肉質な細マッチョ体系で、、これは正に、、


「二十代の時の俺じゃないか……」


 そう、二十代の俺だ……更にいえばこのころが自分の最後のモテ期だったのだろう、然し、この頃の俺と言えばオタ趣味を更にこじらせていて、周りのオタ友は「今こそ彼女作るのですぞ!!」とか言ってくれていたのに、彼女なんていらん、とか何とか言って、告白されても何度も断ってずっとオタ友とアニ〇イト行ったり、アニメ話に花咲かしてて、、


 かれこれそのまま大学を卒業し晴れて非リア社会人街道が始まったんだ、三十路近くにやっと「あの時彼女つくっときゃよかったぁ!!」とか言ってて、、まあオタ趣味は変わらずあるんだけどね、然もそういって悔しがってる頃に当時のオタ友は結婚するとかほざいてて、、


「もしかして俺にリトライ出来る転機が来たのか??」


 いやこれはどっからどう見ても転機だ、この今を逃せばいつ転機が来るというのだ!!


「よし!! そうと決まれば!! まずは町でも何でも探さなくては!!」


 そうまずは人がいるところを探さなくてはならない、


「俺はここを新たな俺として生き始める為の第一の地とする!!」


 そう言って男は両手を広げて草原を眺めた、行く先の先まで緑一色の草原を。


 そういえばこの異世界にくることが成功したってことなら剣でも何でも出せるんじゃね!?


「そうと分かれば俺やるしかねぇだろ!!」


 そう言って男は両手を合わせる合掌する、そのまま流れるように片手を掌にかざす、

 すると掌から、剣の柄が現れた、


「これは!! いける!! 行けるぞぉお!!」


 男はそう叫ぶとその柄をかざしている片手で握り掌から抜き出すようにかっこよく決めポーズを取りながら引き抜く、するとその握った先には本当に鋼鉄で出来た刃の付いた剣が在った。


「は……はは……なんだこれ、めっちゃカッケェェエじゃねぇえかぁああああ!!」


 その後少しの間、自分の手の中から現れた鋭い光沢を放つ白銀色の刀身を持った剣を眺めた、、思い描いていたのはサイバーパンクな片刃刀だ、


 そして実際に出てきたのは、しっかりと片刃の刀身に根本近くにはソードブレイカーにも似た凹みと、刀身全体へ脈の様に広がった淡くひかる光の筋、そしてスタイリッシュで近未来チックなカーボン質の握り、まさしく思い描いていた片刃刀だ、


「スゲー……じゃあ、これも出来るかもな……」


 そう言うと男は今出した片刃刀に合う鞘を生み出し納刀すると片手をすらりと前へ伸ばし広がる草原のその向こうにある地平線を示す、


 カッコイイセリフ言っても別に白い目で見る人はいないし……ちょっとやってみるか……


「舞い狂う星剣群シュテインフェレット!」


 男は満面の笑みを浮かべてそう言いながら起こしたい事象を想像した、


 直後、男の周囲には正に想像した通り、魔法陣から呼び出された様々な形状をした星剣が宙を浮き男の横に並列に浮く、


「やっぱすげぇ!!……ってそろそろ一回周囲を探索しないと……」


 急に正気に戻った男は浮いている星剣の一つを手に取り、地面に突き刺した、


「またこの地点には戻ってきたいし、目印には十分だ、それじゃあ周りの探索に移りますかね、」


 男は地面に深々と刺さった、星剣を満足げに眺めその場を後にした、


 ────


「ってさっきは大口叩いたが……何処まで続くんだよこの平原……」


 男の歩く先に映るのは緑、緑、緑と変わらない殺風景な平原だけである、


「せめて誰かと会えればいいんだが……そう上手くは行かないよな……」


 ラノベによくあるいわゆるテンプレ展開という名の理想と現実の違いを目の前に突き付けられ、男は弱音を漏らす


「まさかこの世界、剣とか魔法以前にそもそも人間が存在しないとか……ないよな?」


「まさか……ないない」とすぐさま否定はしておくものの、もしかしたらと考えゾッとする、だが人が居ない場合それではそもそも魔法や剣がある意味がない、だから、その可能性はゼロではあるが……


「もしかしたらってのがあるからなぁ……」


 男はビビりながら一直線に歩いて行った、


 何十分歩いただろうか……一向に人の気配どころか、建築物の一つともすれ違っていない、まさかさっきの説が当たっているのでは……


「ん!? あれは!!」


 男の見た先には、顔を半分ほど布で隠した旅人の風貌をした人と、たくさんの荷物を背負ったロバ……だろうか? が歩いていた、


 やっと人がいた、急ごう、また一人になっては流石にSAN値が削れる気がする、いやもう半分ぐらい削れてはいるのだが、


「おーい! そこのひと! 止まってくれ!」


 叫んだことが功を奏したのか、旅人姿の人はこちらに気付き足を止める、然し、まだ距離は200メートルほどある早くしなければ、行ってしまうかもしれない、急げ!!


「って、うぉあっ!?」


 急に走ったせいか、盛大に草原を転がってしまった、


「いってて……」

「あの……大丈夫かい?」


 いつの間にか、こちらにまで近づいていた旅人が、転がり空を見上げている自分を覗き込む、


「ぅう……なんとか、って、うぇ!?」


 いつの間に!!と驚いたせいで変な声が出てしまった、中性的な声をした旅人は口元が隠れ、キャスケットに似た帽子を深々と被っていてほとんど目しか出ていない状態だったため性別はわからない、


「うぇってひどいなぁ、君が呼び止めたんじゃないか、」


 感情の薄い声ではあるけれど、おっとりとした目や仕草から怒っているようには見えなかった、


「ああ、済まない」

「まあ別に構わないよ、で、僕を呼んだのは何か僕に用があったのかい?」


 首を傾げこちらを見る旅人に、男は体勢を直して向き直る、


「ああ、用って程の用ではないのだが、この近くに人のいる場所はないか?」


 男の問い掛けに旅人は目を丸くしてクスリと笑った、男はその反応にはてなを浮かべ旅人をみた、


「いやごめんごめん、この辺りに人が住んでいる場所って言ったらここから南に少し進んだところにあるアルトレラ皇国ぐらいしかないものだから……そこを知らないのは珍しいなと思ってね、見た目もそうだけど、君、この辺りの人じゃないの?」


 旅人の反応に理由が分かり男は少し目をそらしながら必死にずさんな言い訳をする、


「いや……えっと、ど忘れしちゃって?」

「ど忘れで片付けられるレベルの忘れでは無い気がするけど、まあいいや、話せない事情があるんだね、僕はトゥエリア。トゥエリア・シャンテッド、北へ南へ、古今東西を旅する行商人だよ、ちょうどさっきアルトレラを出てきたんだ、色々仕入れたから何か見ていくかい?」


 トゥエリアと名乗った行商人はそう言って、男を見る、男は気まずそうにトゥエリアの目を見るといった、


「ああ、その誘いはありがたいんだが今持ち合わせがなくてな……」

「え……お金ないの?でも大丈夫、物と物の物々交換でもいいよ?」


 トゥエリアは引き下がらず提案をして来た、この肝の座った所は流石は商人といったところだろうか、


「だが、交換できる物も特にはないんだが」

「そっかぁ、でも、君が背中に背負ってる剣はどう?」


 トゥエリアはそう言って男の背中を指さす、然し、男はそれを隠す様に体勢をずらし話す、


「いや……これは自分の大切な剣なんだ、悪いが交換することは出来ないな」

「ふーん、形見とか?」

「まあそんなところだ、だから悪いな」


 男はやんわりと断ると、トゥエリアは「なら仕方ないね」と歩き出す準備をする、


「まあ僕は色々な国を練り歩いているからまたどこかで会うかもね、それじゃあ僕は行くよ、おいでラント」


 トゥエリアはそう言って、となりにいるラントと呼ばれたロバ?と共に歩いて行った、


「ああ、じゃあな」


 男は歩いて行ったトゥエリアたちに軽く手を振ると、自身も言われた通り、アルトレラ皇国とやらへ向かう、


「確か南だよな……」


 そう言って男はトゥエリアが指差していた南を目指して歩いた、


 ────


「お! あれか?」


 歩いて数分……男の目の先には城壁に見える巨大な石造りの壁が見えてきた、


「よし遂に見えてきたぞ!」


 国という物があることを確認できて足が軽くなる、足早に草原を駆け城壁の前までたどり着いた、


「ここがアルトレラ皇国……」


 整備されているのだろうきれいな石造りの城壁を見て男が圧倒されていると、近くの門の前にいた門番、であろう人が男に近寄ってくる、


「旅人ですかな? 入国なさいますか?」


 親切かつ丁寧な口調の老年の門番が聞いてきた、男は向き直ると同じ様に丁寧に受け答えに応じた、


「ええ、入国手続きを行いたいのですがお願いできますか?」

「はい、大丈夫ですよ、持ち物はその剣だけですかな?一応持ち物検査のため調べさせていただいても?」


 老年の門番はそう言って、剣を渡す様に手を出す、男は了承し背負っていた片刃刀を門番の手に置いた、


「どうも、片刃刀とは珍しいですな、それでは失礼、」


 門番は鞘から剣をだし刀身を見た瞬間固まってしまった、男はどういうことか分からず門番に問う、


「あの……門番さん?」

「……」

「門番さん?」

「……はっ! あ、ああ、失礼ですが、この剣は誰が鍛えられた物かわかりますかな?」


 正気に戻った老年の門番は少々食い気味に男に聞く、男は正直なことを言ってややこしくしたくないので、「母から継いだだけだからわからない」と噓を言った、


「そうですか、いや実に素晴らしい出来の逸品でしたので、誰が鍛えられたのか興味が出ましただけですので、お気になさらず、」


 そう言って老年の門番は剣を鞘に納刀し男へ返した、


「見た限り、その剣以外に持ち物も見られませんので入国していただいて、大丈夫ですよ、どうぞ我が国を堪能下さい、」


 老年の門番はそう言って、門を開き男に対し一礼する、最後まで丁寧な人だと思いながら男はアルトレラ皇国に入っていった。

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