メンヘラしかいないアイドルグループのマネージャーになった俺、「どんなに炎上しても俺はずっとお前たちのファンだから」と言ってなんとか人気アイドルに導いた結果、みんなヤンデレに進化?してしまった件について

倉敷紺

おめでとう!メンヘラアイドルはヤンデレに進化?した!


 「ああ……今日も疲れた」


 仕事が終わって家に帰宅している途中、家の近くにあるコンビニで一息つきながら今日のことを振り返る。


 俺、「甲斐仁(かいひとし)」は中堅芸能事務所の三年目として、とあるアイドルグループのマネージャーをしているのだが、担当している彼女らは一癖も二癖もあるメンヘラを拗らせた奴らで、案の定今日も厄介ごとに巻き込まれた。なんで練習場にストゼロを持ち込んむんだあいつらは……。


 とはいえ最初の頃に比べたら、今のあいつらは立派な人気アイドル。イベント会場でやらかして炎上した結果、ヤ●ーニュースやツ●ッターでモラル皆無のアイドルとかメンヘラが酷すぎるとか言われてたけど……今はむしろそれを強みとしている。


 あの時は俺も色んなところで謝り倒した。でも、何よりあいつらが凄い一生懸命頑張って、俺の意見にも耳を傾けてくれているからこそ今があるんだろう。正直、何かとめんどくさい奴らだけど、一ファンとしてもっとあいつらが輝けるよう頑張らないとな。


 「よし、帰るか」


 コンビニのゴミ箱に、飲み終わったジュースを捨てて俺は家に帰宅する。明日も早いし、さっさと寝るとしよう。そう思って家の鍵を開けようとすると、何やら違和感を感じた。


 「あれ、開いてる?」


 なぜか家のドアが開いていた。あれ、鍵をかけ忘れていたのかな。空き巣とかに入られていなければいいんだが……ん、なんか見覚えのある靴が三足ある。


 「あ、お帰りマネージャー! あたしにする? あたしにする? それとも……やっぱりあたしだよね!」


 玄関から、ビュンと担当しているアイドルグループの一人、「有明彩未(ありあけあやみ)」がなぜか帰宅した俺を出迎えてくれた。


 こいつはスタイル抜群だし、男性の目を引く素晴らしいものも持っている。しかも顔は祖母がアメリカ人であるため、それを引き継いだのか、綺麗な金髪、洋風な顔立ちでかつ肌も透き通るように綺麗だ。正直、ビジュアル面に関してはアイドルとしても相当上位なものを持っているだろう。


 だが、性格がゴミだ。自分を可愛いと言わないアンチとツイッター上で喧嘩したり、いらないことを言ってはプチ炎上してツイ消しを繰り返す始末。めんどくさくて扱いづらいメンヘラだ。


 「あ、ま、マネージャーさん。お、お帰りなさい……。わ、私と一緒に、ストロングゼロ飲みませんか? こ、断ったら……り、リスカしちゃいますよ」


 もう一人、ひょこっと担当しているアイドルグループの一人、「弓田紫音(ゆみたしおん)」が現れた。


 こいつは小柄な体型で、守ってあげたくなる雰囲気がある。それに顔もぱっちりとお人形さんのように整った可愛らしい顔立ちで、つい目を惹いてしまう。彼女もアイドルとして、相当上位の素質を持っているだろう。


 だが性格が終わっている。自己肯定感がかなり低く、しかも被害妄想も酷い。自分が否定されたと思ったらすぐにそれを忘れるためにストロングゼロを飲み、挙句見境なく暴れる始末。ストゼロ没収したらリスカするとか脅してくるし……なかなかに厄介なメンヘラだ。


 「ああ、マネージャー帰ったんだ。はいこれ、準備しておいたよ」


 そして最後、スタスタと担当しているアイドルグループの一人、「牧野内千秋(まきのうちちあき)が出てきた。


 こいつは元モデルということもあって、身長は高く顔立ちも他の二人と比べて大人っぽい美人だ。それに普段あまり笑わないこともあって、たまに見せる笑顔にハートを射抜かれたファンも多いらしい。やはりこいつもアイドルとして、相当上位の素質があると言っていい。


 だが、性格が厄介だ。表向きは平然とした顔をしているくせに、裏垢作って1日に何件も病みツイをしたり、自分が一番になりたいがために他のメンバーの悪口を自作自演したりなど、性根が腐ったメンヘラだ。


 「おい、なんだこれ……は」


 千秋から渡された紙を見ると、それはなんと婚姻届と書かれたものだった。おいなんだこれ、いきなりすぎて頭が正常に機能しないんだけど。


 「私たち結婚するじゃん。だから用意しておいた。ほら、もうマネージャーがハンコ押すだけだよ」


 「何言ってんの千秋! マネージャーと結婚するのはあたしなんだけど!」


 「ち、違います……わ、私ですよ……マネージャーさんと結婚するのは」


 「……いや待て。俺は誰とも結婚しないし、そもそもどうしてお前らうちにいるんだよ!」


 結婚とか訳のわからないことを言っているのも気になるが、そもそもどうやってこの家に入ってきたのかが気になる。


 「え、鍵作ったからだよ」

 「か、鍵を作りました……」

 「鍵作ったんだよ」


 「……は」


 か、鍵って……もしかして、俺の知らないところで合鍵作ったってことか!? なんだこいつら……元々イかれた奴らだとは思っていたが、まさかここまでとは。


 「いやーマネージャー全然同棲とか持ちかけてくれないからさ。あたしも悪いとは思ったんだよ? でも、この好意に気づいてくれないマネージャーが悪いんじゃん」


 「い、いやその理論はおかしいだろ」


 「ま、マネージャーさん……私のこと、ずっとお前のファンだからって言ってました……。そ、それって私のことが大好きってことですよね……え、違うんですか? い、嫌です、そんなこと言ったら私この場でストゼロ飲んで暴れちゃいますよ」


 「そ、それだけは勘弁してくれ……。そ、それに俺は「お前たちの」ファンだって言ったんだ! しかも恋愛感情じゃない!」


 「いや、アイドル担当してるマネージャーがずっとファンだからっていうのは告白でしょ。ほら、早く結婚しよ」


 「い、いやしないから。ほら、お前ら早く家に帰れ。その鍵は回収するからな」


 「……」

 「……」

 「……」


 「え、おい、ちょ」


 「全く……マネージャーは素直じゃないなぁ。これからあたしがどれぐらいマネージャーのこと好きなのか、たっぷり味あわせてあげる」


 「ま、マネージャーさん……好きです。大好きです。大大大好きです。私だけを見てください、私以外を見ないでください。ああそうだ、もう私以外、見れなくしてあげますね」


 「ごめんねマネージャー。もっと静かなところで愛を育みたかったけど……さて、縄を取りに行かないとね」


 どうやら俺は、こいつらを甘く身過ぎていたらしい。今のこいつらは、メンヘラというよりはまさにヤンデレじゃないか……。いや、もしかして俺がこいつらをヤンデレに進化させてしまったのか!?


 おいおい、冗談じゃないぞ。ただでさえめんどくさいメンヘラであるこいつらがヤンデレに進化してしまったらもう如何しようも無い。


 一体、俺は何をしでかしてこいつらをこんなことにしてしまったんだ? 思い返せば、こいつらと出会った時は……。


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「最愛の彼女を親友にNTRれて泣いていた日の夜、クーデレな後輩が返り血を浴びていた。」

https://kakuyomu.jp/works/16817139555178596406

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