ガチョウ倶楽部殺人事件

第1話 人気メンバー、突然の死

　「お笑いトリオ『ガチョウ倶楽部』のひとり、川島将兵が死んだ」

　そのニュースはダルさを抱える平日の朝早くに突然に飛び込んできた。

　「チロリン、チロリン！」というテレビのニュース速報を知らせる音に促されテレビ画面に目を向けると、そこには

「１１日午前０時頃、『ガチョウ倶楽部』のメンバーでお笑い芸人の川島将兵さん（６１歳）が自宅で死亡しているのが見つかった。病院に運ばれ死亡が確認された」と無機質なテロップが出ていた。

　続けざまにテレビにアップで映し出された眼鏡の男性アナウンサーが

「今日午前０時ごろ、東京都中野区の川島将兵さんの自宅で川島さんが首を吊っているのを家族が見つけ通報しました。川島さんは病院に運ばれ死亡が確認されました。自殺を図ったとみられています。

川島さんはお笑いトリオ『ガチョウ倶楽部』のメンバーとして活躍していて、テレビ各局のバラエティ番組に出演していました。６１歳でした」

　と川島将兵が自殺したということを速報として伝えていた。

　つねにおとぼけ続けている人気お笑い芸人の自殺というニュースは、単調な日々の一コマである単なる一日の朝には妙にそぐわない空気を醸し出した。

　そして、そのニュースのなかでは川島将兵が残した遺書については全く触れられていなかったのだった。