15.大聖堂の決断……②
「結論から申しあげます。『魔女』と呼ばれる存在は確かに存在しておりました。ドレッドノート卿の報告書の内容に偽りや誤認はないものと思料します」
「それは確かなのね、ユーリア?」
「半径500mの
レイモンドが提出した報告書のページを捲りながら、重ねて問い掛けるミシェルの
「
「捨て置いた者の正体は……掴めているの?」
ユーリアは首を左右に振った。
「まるで、天から降って来てみたいな言い方ね……本当なのかしら……?」
ミシェルは眉根を寄せ、ここで初めて視線を隣で沈黙を貫いている男に向けた。彼は何も語ろうとせず、ただ
「フン、
高く澄んだ硬質な声が響いた。
「故に、その者は『
「状況的な確証を集め推論した結果でありますれば……」
「
返答を遮ってアイリスはユーリアを睨みつけた。
「滅相もございません。我は……」
「黙れ、
アイリーンの雷喝にとうとうユーリアは震え上がった。
片膝を突いて
『ユーリア。
それはまさに二人にとって『
そしてそれがアイリスにとっては『地雷』であり『
椅子を蹴り飛ばさんばかりに勢いよく立ち上がったアイリスの怒りの声が部屋中に響き渡る中、ユーリアは頭を下げたまま震えていた。
このような恐怖を味わったのはいつ以来だろうか? そう思えるほど、アイリスの怒りは凄まじかった。
その時、静かな声が空気を切り裂いた。
「アイリス、そこまでだ。控えよ……」
硬質な響きを持つバリトンボイスがアイリスの長い耳に届き、彼女の耳先が僅かに震えた。
それまで沈黙を保っていた
「さりながら
「二度は言わぬ」
「はっ!」
立ち上がり、激しく激高していたアイリスは、シルヴィの視線を真正面から受け、不承不承腰を下ろした。憤懣やる方ないのは明らかではあったが、それでも命令に従い口を閉ざした。
「ユーリア、
その声には、見た目の年齢を超えた威厳が感じられる。促され恐る恐る顔を上げたユーリアの前には、端正な顔立ちをした青年がいる。
肌の色は雪の精霊のように白く、空を模したかのような蒼銀の髪と
それが『シルヴェスター・アール・シェフィールド』……
『アニマ』の信徒であるフィルツブルク聖皇国の軍勢に村を焼かれ、身一つで荒れ野を彷徨っていた自分を保護し、
あれからどれだけの時間が経ったことだろう。
「信を置く
大きな執務机に両肘を付き、シルヴィは静かに語り掛けた。
「はい
「ほう……」
シルヴィの
「『
「何!? ユフィーだと?」
声を荒げたアイリスが再び立ち上がった。その手には
「おのれ! 言うに事欠いて
「アイリス」
シルヴィは手を挙げ、いきり立ったアイリスを制すると、我に返った彼女は、主人に
「も、申し訳ございません……」
「続けよ……」
ユーリアは深く息を吐き、続けた。
「ユーフェミア様は、
「ユフィーがそう申したと……?」
「はい
「ふむ……」
シルヴィは腕組みをして瞑目した。
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