12.聖騎士と大精霊……②
ユーリアに促され、レイモンドも恭しく膝をつき、頭を垂れた。
『
「我が盟友たる眷属に連なりし者……突然の訪問、あいすまぬ。我は
突然この場に姿を見せた
「お立ちなさい、二人とも。我は長くこの姿を保つことはできぬ故、言葉が通じる内に我が請願を聞き届けて欲しい」
思わぬ大精霊の言葉に、二人は驚き、顔を見合わせた。この世を司る神にも等しい大精霊が、
レイモンドは恐る恐る訊ねた。
「……と、仰いますと?」
「あの子……今は『
レイモンドはとうとう目を見開き、困惑の表情を浮かべた。
何故、
――それも固有名詞を……それにどうして今迄……?
彼は
だからこそ、レイモンドは口を開いた。解決の糸口を求めて。
「
ユーフェミアは静かに首を横に振った。
「いいえ、レイモンド。
「ユーフェミア様……どうしてそれを?」
今度はユーリアが目を見開いた。
彼女の
「彼とは長い付き合い故……色々存じておる」
ユーフェミアは意味深長な笑顔を浮かべ、怪訝そうな表情を浮かべるユーリアを見つめた。
「もちろん『アイリス』の事も」
「……!?……」
ユーリアは、今度は驚愕した。
『
「故に我は、残り少ない力を使って
ユーフェミアが柔和だった表情を引き締めて話を続けた。
「あの者は『天空の
「何と!?」
「どういう事でございましょう?」
想像を遥かに超えた大精霊の言葉に二人が色めき立った。
「残念ながら今は目覚めてはおらぬ……
シェリルがこの世界の均衡を保つ『
ユーフェミアの言葉に、レイモンドとユーリアは言葉を失った。世界の均衡、アニマ神の暗躍、そしてシェリルの真の姿。これらの情報は、彼等の想像を遥かに超えていた。
しばらくの沈黙の後、レイモンドが重い口を開いた。
「『天空の
「ユーフェミア様、それではあの子を守り、導くことが世界の運命を左右するということでしょうか?」
ユーリアも深い思慮の表情で言葉を続け、ユーフェミアは頷いた。
「然り……されどそれは容易ではない。アニマの尖兵どもが、この地で起こった魔力反応に気づいておる」
――しまった!
レイモンドは激しく動揺した。自らの判断が敵対する勢力を刺激する結果になってしまっていることに。
「心せよ。抗うにせよ、受け入れるにせよ……その日は遠からず」
「では、我等は何をすべきなのでしょうか?」
レイモンドが切実な表情で尋ねた。
「先ずシェリルをこの村から安全に送り出すこと。そして、彼女の力を正しく導き、成長させること。そのためには、ホーリーウェル魔導学院が最適の場所となるであろう……されば
ユーフェミアは二人を見つめ、静かに語った。その姿は顕現した時より明らかに朧気になってきている。ユーリアは驚愕し、一瞬躊躇したが、決意を固めて応えた。
「私から
ユーフェミアはユーリアを制するように片手を上げ、困ったように微笑んだ。
「一つ問題がある。
「気の遠くなる程の時間……それはいったい?」
ユーフェミアの言葉に、ユーリアとレイモンドは驚きの表情を浮かべると、ユーフェミアは静かに頷いた。
「ユーリア。
「……っ!?……」
ユーフェミアの言葉に、ユーリアは当惑した表情になる。その眉間には
その様子を傍らで見て、レイモンドの心の中では、様々な疑問が渦巻いていた。
――どういう事だ?
いや、馬鹿げている!
しかし……まさか、そんな事が?
もう想像がつかない事態に思考が追いつかない。レイモンドは汗でずり落ちる眼鏡のフレームを指で押し上げた。自らを落ち着かせるように。
「彼等にとって、この報告がどれほど重要かつ、慎重な判断を下すものになるのか想像するのじゃ」
ユーリアもまた腕組みをして考え込んだ。彼女の表情は真剣そのもので、その青い瞳には深い思慮の色が宿っていた。
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