第九話 デーモン・キス

 光線で構成された半光球の中に突然紫色のエネルギー球が拡大し、少しずつ光の力を飲み込んでいった。

 あっという間に光の球が完全に飲み込まれ、同時に紫色のエネルギー球も黒い霧の中に放散された。その黒い霧は漏斗の形になり、ザンカフロスが名前の悪魔の体に吸収された。これを見て、マルフォンは笑った。

「このレベルの光の力を防ぐ必要がない!ザンカフロス!」

 ザンカフロスはこれを聞いて「クックックッ」と笑い、侮蔑を込めた笑いを浮かべた。鎌を背負う悪魔はうんざりした表情でマルフォンを見ずに愚痴をこぼす。

「愚か者め、ザンカフロスが鎧を展開してこの土地を守らなければ、テレポーテーションサークルと宇宙の裂け目は破壊されるぞ。」

 マルフォンは軽蔑してその悪魔と祭壇の下の僧侶たちをちらっと見た。

「ふん、クロル、お前の不死身は生の痛みをもたらすだけだ、あまり俺を怒らせるな、でなければ…」

 目を半分まで開けた四人目の悪魔、その真っ赤な目から絶望的なオーラを放つ。彼はマルフォンをじっと見つめ、さっきまで生き生きしているマルフォンはすぐに口を閉じた。


 マルフォンは空の光帝を見上げて右手を空に振った。そうすると破壊された祭壇の下にある散らばった石や残骸などが光帝・カルロ・ジックに向かって飛んでいった。

 カルロ・ジックは腕を組んだまま飛んでくる岩の破片を見る。突然、カルロ・ジックの体の周りに厚い光輪が現れ、多くのビームを発射して、まっすぐにすべての岩の破片を粉砕した。

 しかしその瞬間、光帝の攻撃はまさにマルフォンの思い通りだった。マルフォンは左腕を振り、空中に散る岩の破片が激しく爆発した。

 衝撃波は光帝がいる所まで拡散した。マルフォンは満足してうなずき、その後周囲の山々を見回し、拳を激しく握りしめ、同時に3つの山々が「カラ!」と大きな音で砕けていくつかの大きな石になった。

 マルフォンは右手を伸ばし、巨大な岩のブロックが渦に巻き込まれ始め、マルフォンの右腕をつなぎ合わせた。同時に、右腕の鎖が展開し、蛇のように旋回し、ついに岩でできた巨大な槍にしっかりと固定した。

 マルフォンは右腕を上げて今度は左腕が岩を引き寄せ、最後に左腕の鎖も岩でできた巨大な盾にしっかりと固定された。

 

 空の爆発からの煙は徐々に消え、カルロ・ジックの周りの光輪は先ほどよりも明るくなった。彼は眉をひそめた。

「この爆発はなんだ、さっき空中で観察した時に邪炎を誘爆させたのは見たが、まさか岩まで誘爆できるとは。他に何を爆発させることができるか、用心しないと。」

 マルフォンは飛び上がり、体の下にある黒い霧を乗り、浮き上がって槍をカルロ・ジックに向けた。

 カルロ・ジックはさらに身の回りの光輪を明るくさせた。

「岩の槍と岩の盾か。少なくともやつはそれを爆発させることができることはわかった。それを使って私を刺し、それを爆発させるだろう。ではここはまず距離を取って光束で壊すか。」

 その後、彼はさらに上空に飛び、その同時に右手を空に向けて叫んだ。

「太陽神の怒り!」

 カルロ・ジックの手から遠くないところに、ますます大きな熱くて眩しい光玉が生まれ、周囲に無数の光線を放っていった。その光線は周囲に放ったあと曲がり、下方のマルフォンに向く。

 眩しく光に混じる轟然たる音が響き、爆撃の後、カルロ・ジックはマルフォンの攻撃の方向をじっと見つめている。しばらくすると、マルフォンの右手が垂れ下がり、左腕が上がる姿勢で、盾が壊れた姿が見える。


 マルフォンは左手をカルロ・ジックの方向に振り、厚い黒い霧の中から岩の槍と盾が作られた後に残る大量の岩が空に飛んだ。

 しかし今回光帝は何も行動しなかった。手を振った同時にマルフォンは漠然と空に現れた多くの魔力の源を感じ、密かに驚いた。

 隠光の軍団全体が現れ、空から地面全体に光線を放射した。軍団全体の光の力は波のようにマルフォンに直面する。あまりにも多くて止められない光の魔法だ、マルフォンの赤い目が数回ちらつき、黒い霧の波が彼の胸の割れ目から氾濫し、光の波を壊した。さらに上空に激しく前進した。

 隠光の軍団が破壊の霧に抵抗するために、自分の体より大きい防御用の光玉を作って入ろうとするが、カルロ・ジックは叫んだ。

「すぐに後退し、破壊の黒い霧を防ぐな!光の魔法で分散させるのだ!太陽神の怒り!」

 兵士たちの光の魔法はカルロ・ジックの魔法と合流して放射されたが、強化された無限の光線でもかろうじて大半の破壊の霧を消し去った。残りの破壊の霧はエネルギーの衝突によって分散された。


 マルフォンは左手に破壊の霧で新たな盾を作り、同時に右手に持っている槍も徐々に黒に染めた。そして周りの山々も、マルフォンが先ほど発した破壊の霧により衝撃で次々と爆発し、山の残骸となる巨大な岩が弾丸のように上空に射撃していった。

 「その邪悪の盾がどれまで抵抗できるか見せてくれ、光の木(ライト・ツリー)!」

 カルロ・ジックが話し終えると、彼の体の周りの光輪が広がってビームとなり、マルフォンの盾に向かって突進した。そのビームが近づく寸前、マルフォンの盾が急に大きくなり、ビームを飲み込み、光の力をすべて食い尽くすように見えた。

 しかし、そのビームも木のように10本の枝のような細いビームに分かれ、細いビームがさらに細く、次々と分かれていった。細いとはいえ、光の力は確実なものだ。マルフォンの盾は粉砕され、再構築できなくなった。


 しかし、マルフォンの奇妙な笑顔が浮かぶ。

「ついに攻撃範囲に到達したぜ!」

 マルフォンは右手の槍をカルロ・ジックに突き刺そうとしたが、その先に軍団の兵士たちによって発射された光が流星群のように落ちてくる。光と破壊の力が激突する!

 この星の空は一瞬光ったあと暗くなった。この激しい衝突により、空間も少し歪められた。ドムとグラシューが向かい合ったときにすでに損害を受けたこの惑星は、やがて惑星全体が崩れ始める。ドムは炎の翼を広げてマルフォンの近くまで飛んで話しかける。

「これ以上戦うのをやめろ、この星は崩壊し始めた。それに最優先すべきなのは闇の領域に行って滅世帝を救うことだ。」

 しかし、マルフォンは反論をする。

「やめる?俺は少し楽しくなったばかりに逃走しろと命令しているか。いつ凡人のお前が俺たちの意思を決めるようになったか?」

 マルフォンはドムの喉を掴んで上に上げる。破壊の力に富むマルフォンに逆らえないドムは無言のままだ。


 この時最後に現れた全身真っ黒な悪魔は赤い目と口を開ける。

「マルフォン、ザンカフロス、クロル、戻ろう、ここはただの退屈な世界だ。」

その後、その悪魔はゲートに戻る準備をする。ドムはそれを見て慌てて叫んだ。

「何!戻る?滅世帝こそ最強の存在であり、比類のない力を与えてくれるのに!貴様らの王を救わないのか!」

 真っ黒な悪魔以外、他の三人の悪魔は激しく笑った。巨大な鎌を持つ悪魔クロルはやや暗い笑顔で掴まれているドムに話しかける。

「滅世帝?お前はソロムネスのことを言っているのか?彼はもはや滅世帝ではない!俺たちは今彼の言うことだけを聞く!」

 クロルは真っ黒な悪魔を指した。

「セミトス!滅世帝二世!」

 ドムはもちろん滅世帝二世のことが全く分からない。加えて、まさか自分がその人物を呼び出せるとは思わなかった。鎧に紫のルーンが光る悪魔ザンカフロスはクロルの続きに話す。

「ソロムネスの破壊の力と言えば、確かにそれは世界で比類のないものです!ただし、残念ですが…」

 ザンカフロスはセミトスの背中にある大きな剣を指した。

「ソロムネスが敗北したとき、軍団の残党は彼の武器、「破壊の剣」を持ち帰り、それをセミトスに渡しました。元から逆世の強者であるセメトス様はいかなる宇宙でも挑める破壊力の源になりました!」

 悪魔たちが嘲笑しているのは明らかだった。しかし、野蛮ながらも愚かではないドムは数回の深呼吸をした後、彼は首を横に振って叫んだ。

「ここで貴様らが引き籠るといずれ創世帝・パーリセウスは逆世に行き、貴様の王朝を覆す!」

 セミトスの体は立ち止まり、振り返って赤い瞳孔を細かくドムを見つめる。

「この俺を脅かしているか?」

「ソロムネス様と連合をすると貴様らにはまだ勝算がある。」

 これを聞いたクロルは眉をひそめる。

「俺たちは破壊の剣を持っているぞ。」

 しかしドムは冷笑する。

「確かに、その巨剣はすべてを破壊し、すべての魔法を遮断することができ、どんな武器でも抵抗することはできないだろう。だがそれは逆世に限られている。パーリセウスも「創造の剣」を持っており、すべてのもの、さらには幻想のものを創造し、すべての魔法を再形成することができる。これは破壊の剣とは正反対の力。その剣を持つパーリセウスと戦う時、破壊の剣も少しでかい金属くずのようなものだ!さらに、貴様らの魔力は計り知れないが、パーリセウスの魔力は無限だ!」

「俺の魔力も無限だが?」

 セミトスはまだ背を向けてくれない。

「なら、貴様は最終的に神の力すら超越する力を持っているか?「滅世の瞳」、パーリセウスは「創世の瞳」を持っているぞ、その瞳の力は時間と空間を制御する、さらに強大な…」

 セミトスは沈黙したままだったが、ドムの話をしばらく聞いた後、彼の血のように赤い目が広がりドムの話を途中で割り込んだ。

「行こう、ソロムネスのその目の中で、万物は灰燼と化す。」

 マルフォンとザンカフロスは無言のままだが、クロルは尋ねる。

「ソロムネスが救出されたら、あなたはどうするつもりか?」

 セミトスは再び目を細めた。

「彼がパーリセウスと戦うとき、俺には他の計画がある。」


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