第五話 邪炎
グラシューは氷骨剣に蓄積されていた力を結集し、頭の上を上げた。その後、白い姿がグラシューの肉体から分離し、飛び出した、氷蓮の上をぐるぐると回っている。
不完全な氷蓮が震え、空いている場所で巨大な蓮の花びらを刺した。蓮の花びらの間に、ノールグラスの神秘的な白い姿が絶え間なく行き来し、その姿は雪の白い鎧をちらっと見つめた。心の恐怖をひとまず抑えて、「なんとかしないと」と思うグラシューは再び攻撃魔法の詠唱を始めた。そうすると、数え切れないほどの氷柱がドムを刺し、血が氷の刺し傷を通って大地に流れ込んだ。通常のドムなら重傷を負えるほどのダメージを受けたが、今はドムの周りには黒い霧の薄い層があり、この黒い霧は氷柱と結合する。
氷柱は黒く染まり、輝きを失い、徐々に割れる。ドムは大きな口を開き、緻密な歯を露出し、そして目に燃える炎は徐々に黒い霧によって満たされる。少しの間、ドム周りの氷柱だけではなく、黒い霧が徐々に広がっていく。ますます多くの氷柱は黒い霧と接触する。染色し、腐敗し、砕け散る。
氷蓮を再生した後、ノールグラスはドムの前に飛んできた。
「ソロムネスの力で我々を倒せると思うか、それは無邪気だ、オルカ!」
ドムはゆっくりと見上げ、恐怖の笑みを浮かべた。その後彼は今黒い炎が飛び回る斧「蛮炎の心・オルカ・ドムの罰(フレイム・オブ・ハート・ペナルティ・オブ・オルカ・ドム)」を地面に突き刺した。黒い「タイタンの剛腕」が地面を割り、大地と氷蓮の破片が粉々に砕け散った後、大地の裂け目に沿って大きな黒いマグマが地面の底から噴出し、氷蓮全体を消滅させた。
グラシューはマグマが頂上まで飛び散る前に翼を広げて逃げた。まだ氷蓮の下にいるノールグラスはマグマが噴射して接触すると、マグマが彼の体を貫通したが、無傷のままだった。その後ノールグラスは氷の羽を空に広げてグラシューの近くに飛んだ。
氷帝グラシューはノールグラスに疑いの表情を浮かべて話しかける。
「ノールグラス、一体何が起こっているか?ソロムネスは創世帝によって封印されていて、闇の領域にある結界の結び目に投獄されているはずだ。ならばなぜドムはまだその力を持っているのか?魔力の根源が完全に切断されているはずだが。」
「何年も前にこの世に侵入した滅世帝・ソロムネスがドムに与えた力は、もうほとんど残っていないが、今ドムはソロムネスとなんらかの魔法のつながりがあることを示すほど強力なパワーを持っている。もしそうであれば、それはあることを証明するだけだ…」
ノールグラスは頭をさげて地面をじっと見ている。彼の顔は純粋なる氷の彫刻のようで、目は青い結晶の塊でゆっくりと光が消えたり光ったりしている。
「滅世帝・ソロムネスは目覚めようとしている。創世帝・パーリセウスの封印は消えてしまう、このすべての惨劇は誰かに導かれるのを待っている。」
その話を聞いてグラシューは苦笑いした。
「それはドムか?」
ノールグラスは首を横に振った。
「こうなると我々残りの数千の氷族の戦士だけではどうにもならないが、今すぐ救援を要請しなければ…」
ノールグラスの言葉は途中に突っ込まれた。
「他に誰が野蛮な炎の軍団の鉄の蹄を抵抗するか?闇の領域の「月夜の軍団」(ムーンナイト・ナイツ)?降伏したばかりの腐肉の軍勢か?風の領域の「自然の軍団」(ネイチャー・ナイツ)?犠牲だけは知っている元素の生き物?光の領域の「隠光の軍団」(ヒドゥンライト・ナイツ)?彼らが暗闇に抵抗できなかった場合、それは軍全体が全滅してしまうではないか?龍の領域の強力なドラゴン軍団(ドラゴン・ナイツ)?彼らは彼らこそが正しいと思う名目上の塵世の保護者としてただ自我を隔離しているだけではないか?」
ノーグラスは再び首を横に振った。
「いいえ、グラシュー、私たちは結局のところ同盟だ。お互いを信頼する必要がある。いまはすぐに龍の領域に行って状況を創世帝に報告し、他の軍団に戦いに協力させる必要がある。ドムたちを抵抗し、ソロムネスの復活を止めろ。」
グラシューは、氷骨剣の2つの蓮の花を巨大な氷の剣に閉じて背中に負った。その後グラシューとノールグラスは一体になり、手を振って巨大なアイスドラゴンが空中に浮かび上がった。アイスドラゴンの胸に穴が開いてグラシューはゆっくりと浮かんで入った。氷に封印された後、氷のドラゴンが非常に速い速度で星から飛び出した。
地面では、黒い溶岩が徐々に固まり、この巨大な溶岩の近くには地面に流れるマグマの痕跡があり、かすかな赤い光が点滅している。
「ドーン、カラカラ。」
溶岩から真っ赤な爪が伸びて地面に降りた。固まったばかりのマグマがいくつかの亀裂を生じ、砂利が飛び散った。
「ドーン、カラカラ。」
真っ黒い溶岩の池から、別の血のように赤い爪が伸びて地面に降りた。その勢いに沿って、溶岩から数本噴水のようなマグマがはねる。黒い煙も一緒に出てきた。
「バン!」
溶岩の模様に覆われる巨大な黒い翼が広がり、溶岩と石がいたるところに飛び散った。
「ふぅ!」
破壊的な黒い霧が衝撃波のようにほこりや石を一掃し、翼から流れる粘性のある溶岩がゆっくりと地面に滴り落ち、薄暗くなり、冷える。
突然、巨大な翼がバタンと閉まり、ドムは噴出するマグマを持って飛び出し、空中に浮かんで、正気を取り戻した。彼は周りを見回して大声で笑った。その声は果てしなく続く荒野を揺さぶる。
「滅世帝ソロムネスの力は比類のないものだが、時間の経過とともにこの力は非常に弱くなってきた。この切り札を手に持っていなかったら、私は檻の中に永遠に閉じ込められるだろう」とドムが語った後、彼は戦場に残る死体を軽蔑して見つめ、そして徐々にテントの廃墟に戻る。
少し時間がたつと、テントの下にある階段から数名のファイア・ドルイドが登ってきてドムの前で跪いた。
ドムはそのファイア・ドルイドたちに語る。
「あの小僧やノールグラスに逃げられたが、まぁ、いいだろう。奴も切り札を持っているし、これ以上戦うと破壊の力で残りの氷族の戦士やコルナー族の戦士を暗化するしかない。」
「いくら氷族の王だとしても、破壊の力に勝てるわけがない、我が王よ」
ファイア・ドルイドの一名がうなずいたが姿勢そのまま話した。
「それは当たり前だ、奴はまだまだ若くて経験が足りない。ただ、破壊の力その具現化となる「毀滅の霧」(デストロイ・ミスト)は触れた者を腐朽させるか、堕落させるか、発狂させるほどの強力な力だとしても、守護神から頂いた創造の力を持つ創世帝・パーリセウスには無効だった。滅世帝でも彼を倒すことができず、その結果、闇の領域の封印に閉じ込められた。創世帝の力は本当に計り知れないものだ。」
「然り、我が王よ。ならば我々は今後どうされるか。」
「それでもわれらコルナ一族が世界を支配するようにしたいのなら、再び破壊の力を手に入れなければならない。いまわれの体に残っているこの薄い力はまだノールグラスに影響を与えない限り長期戦には無理だ。そして炎の領域の軍隊だけでは創世帝パーリセウスが作成した防御を突破できない。」
「僭越ながら…炎帝、雷の領域から援軍を要請しても?」
ファイア・ドルイドのもう一名から助言をした。
「雷の領域?「雷虎の軍団」(ライトニングタイガー・ナイツ)は加わってこない。あの臆病者の雷帝・ノギは完全に創世帝の従僕になっている、無駄だ!」
ファイア・ドルイド達はこれ以上進言せず、ただそのまま伏せる。
「うーん、そうだ。滅世帝・ソロムネス様はかつてわれわれに世界と世界の間のテレポーテーションサークルの作成方法を教わった。それで滅世帝・ソロムネスの召使い、悪魔たちを召喚できるかもしれない!彼らの助けがあれば、われらは間違いなく創世帝の防衛を破れる!手遅れしてはならん!今すぐ炎の祭壇を作れ、そして炎の司祭に呪文を唱えさせてテレポーテーションサークルを作るのだ!」
「承った、炎帝!」
ドムは大笑いしてテントから出て遠くへ飛んだ。
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