俺が美少女高飛車お嬢様にフリマアプリで買われて溺愛される話
@nekuranomiko
第1話 フリマアプリに出品されてしまった
「今日から貴方は私の所有物であり、執事であり……そして彼氏よ!」
ダークブラウンの髪を揺らした美少女は俺に指を突き立ててそう宣言する。
「私を全力で愛でる権利をあげるわ!」
「ちょ、ちょっと待って! 説明してください!」
これは、親友の悪ふざけにより始まる騒動なのであった……。
◇
「暇つぶしにお前をフリマアプリに出品したわけだけどさ」
「は?」
昼休みの教室。
俺はその言葉に耳を疑った。
「は……何を言っているんだ? お前……変なクスリでもやってるのか?」
「嘘じゃないって」
そう言いながら、親友である斎藤は俺にスマホの画面を見せてくる。
『星見誠司 17歳 \999,999』
斎藤が見せたスマホには、有名なフリマアプリの出品画面だった。
「いや、お前、嘘だろ?」
添付されている写真は、いつの間にか盗撮された全身図と顔写真である。
あとは少しの説明文。
『状態はいいです。健康です。運動神経はありますが、少し頭が弱いです。値下げ交渉はご遠慮ください』
「てめぇ!」
アイアンクロー!
「うわぁ! 暴力反対! 暴力反対!」
父親から受け継いだのアイアンクローを斎藤にくらわせる寸前で止める。
「……なんでそんなことしたわけさ」
「いやぁ、こういうのって規約あるじゃん?」
こういった一般人同士でやり取りするフリマアプリは、結構詳しい規約がある。
生鮮系の食品は駄目、発酵食品は駄目、だとか。
「親友を出品してはいけないっていう規約はなかったからさ」
「なんで人身売買はいけるんだよ」
「仕様の穴を突いたってやつだな、がはは」
「言っとる場合か」
栗みたいな顔、合わせたかのような髪型でいて低身長の斎藤は悪びれずに笑っている。
斎藤の悪ふざけは度が過ぎることがあるものの、流石にこれは酷い。
「って、この馬鹿みたいな金額設定……だれも買わないよ」
「もしかしたらワンチャンあるかもよ? お前、顔はいいし」
「うっせ」
これこそまさに身売りではないか。
お金はいくらあっても困らないけれど……こんな真似するより、堅実に働くべきだと俺は思う。
どうして俺がお金にこだわりがあるかというのは、父親の影響が大きいのだけれど……それはまたおいおい。
「今から取り下げるから、安心してくれ」
「ほんと頼むよ」
「任せろって……あれ?」
斎藤が固まる。
「なんだよ、流石に笑えないぞ、早く消せ――」
俺が斎藤を注意しようとすると、突然彼は椅子から転げ落ちた。
「お、おい!? 大丈夫かよ!?」
「な、なんてこった……」
「はい?」
「う、う……売れて、売れてしまった……!」
な……なんだって!?
◇
「お、おい! 見ろ! 誠司!」
「なんだよ」
放課後。帰宅する準備を机でしていた時に、息を切らして斎藤がやってきた。
人権を売買に出した相手に対しても、優しい俺は無視なんてできなかった。
「振り込まれたんだよ」
「はぁ……?」
あの後、二人っきりになってどうすべきか考えた。
で、規約の一つにある『期間内に支払がなければ無効になる』というものに注目した。
どうせネタとして購入しただけだろうと判断した俺たちは、それに縋る気持ちで数日待つことにしたのだ。
それで放課後。
突然斎藤はそんなふざけたことを言い出した。
「見てみろよ」
そこには、『支払いが確認されました。出品者は発送してください』と表示されている。
「……嘘だろ」
「……ほんとごめん」
遅い、とても遅いよ、その謝罪は。
「誰が購入したんだ?」
「ユーザー名は……スノウフラワーさん、か」
流石に本名ではなかった。
何度も画面を確認し、これが斎藤の世迷言ではないことを知る。
そうなると段々と……目の前が真っ暗になる。
俺は……荷馬車に乗せられて売られるのか?
そのとき、斎藤のスマホに通知が来る。液晶には『購入者からメッセージが来ています』と表示されている。
「メッセージ……」
「配送方法とかだろうか」
「いや、普通にキャンセルのお願いだろ……」
こういうフリマアプリは、取引後にお互いを評価するシステムである。
相互に評価し合うことで、悪質なユーザーを弾くことができるのだ。
で、何か問題があった際はこういったメッセージの遣り取りをしておけば、無駄な行き違いが減る利点がある。
「……発送方法について書かれているな」
そこには、『今晩、受け取りに参りますので、よろしくお願いします』と書かれていた。
――いつだって人はお金がなければ生きていけない。
――地獄の沙汰も金次第、とはよく言ったもので……。
――これは、俺、星見誠司がとある令嬢に購入されたことから始まる物語である。
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