第8話

病気に付き合ってから数年。


病状は寛解期のほうがかなり長くなって安定していると、外来の日に医師から説明があった。


先生の目標である、感情の振れ幅の低め安定が続いている。

そしてそれは、私という家族のお陰でもあるのではないかと。

どんなに良くなったように見えても、薬は止めずにしっかりと飲むように指導された。



私たちは安心する。


病院からの帰り道。


「良かったね。頑張っている甲斐があるね」


「そうだね。良い先生に巡りあえたこともあるけれども、美穂ちゃんの存在が大きいと思う」


私は照れる。


智美の病気のコントロールがつかない時は、正直辛かったが、彼女だから受け入れられた。

躁状態では罵られ、物は買わないように誘導し、性的欲求を満たし。


鬱状態では泣かれ、気分をはかり。自殺企図に注意し。


日常生活を整えたのと、薬の調整が良かったみたいだ。


「今日はご褒美で回らないお寿司でも食べに行こう」


「高いんじゃないの?」


「回るお寿司と一桁違うかも。大丈夫、私は高給取りだから」


智美は微笑む。


私は足を止めた。

智美は振り返って私を見る。


今がタイミングだ。


「高校の時から智美のことがずっと好きだったよ。病気とはいえ、触れあえて嬉しかった」


「うん。薄々気付いてた」


ばれていたか。

私は苦笑い。


「これからは、一人で抱え込まずに私に頼って。いや、いっそのこと依存して」



もっと依存しても良いんだよ。

あなたのためにも。

そして私のためにも。




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それでも親友を愛せますか milly@酒 @millymilly

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