「暑いね」

『暑いね』


言葉が2つ、蜃気楼の中へ。


「今年はお祭りあるかなぁ」

『あるかなぁ』


雲は笑顔の形でどこかへ去った。


「駅前のパン屋潰れたって」

『あそこのアンパン好きだったなぁ』


そう言って笑ったのは、夏のせいだろうか?


「今年はどこか行こうか」

『そうだねぇ』


心地いい風が僕らの隙間をすり抜けた。


「海」

『山』

「鳥取」

『東京』


僕らは、正反対でよく気が合う。


「山は暑いよー」

『泳ぐの苦手』

『砂丘だって暑いでしょ?』

「東京なんて、夏に行くものかい?」


ワクワクしながら、ニコニコしながら

茹だる夏の夕方に、僕らは言葉を交わし続けた。


「暑いなぁ」

『暑いねぇ』

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