二子玉家の兄は今日も仲良くお泊まり中(3)
夕食を終えた俺たちは、凛の部屋に戻る前に風呂を済ませることにした。
もちろん言わずもがな、二子玉邸の風呂は豪華な大浴場である。
中心においてあるマーライオンの上下逆バージョンの像には、なぜ逆なのか幼い頃から疑問を持っているが…
何はともあれゲームを再開した俺たちは、先ほどの続きを楽しんだ。
その後俺たちがゲームをクリアして、時計を確認した時には、深夜0時を既に回っていた。
「やっとクリア出来たな!手伝ってくれて本当に助かった」
「ひさしぶり凛とゲーム出来て、俺も楽しかったよ」
「もういい時間だし、そろそろ寝るか~」
「そうするか」
凛の部屋にはベッドがあるのだが、昔から俺が泊まりにきたときは、そのベッドは使わず、敷き布団を3つ並べて川の字になって寝ていた。
まあ、今日は鈴が居ないので2人だが…
隣に寝ている凛が楽しそうに喋りかけてくる。
「なんかこういう感じ懐かしいな」
「なんだかんだこうして凛の家に泊まるのは、小学生以来だよな」
「いつも俺と鈴が喧嘩するせいで、最終的に正樹を間に挟んで寝てたの覚えてるか?」
「覚えてるよ。結局俺が間に挟まっても喧嘩は止まらなかったけどな」
「あれは鈴が悪い」
そう言ってむくれる凛にも非があると思うが、それを言うとさらにむくれてしまうので、口には出さない。
「全然眠くないんだよな。なんか話そうぜ」
「話すって何を?」
「どうせなら鈴がいない時にしか話せないような事話したいな」
「そんなことあるか?」
ここで凛が少し小声になる。
「正樹は好きな人いないのか?」
俺たちは昔から一緒にいるが…
いや、いるからこそ今までお互いの恋愛話を聞いてきたことはない。
「いや、俺はいないよ。凛の方こそどうなんだ?」
「俺に近づいてくる女は碌なのが居ないからな。俺もないよ」
「よく告白されてるのは噂で聞くけどな」
「あいつら全員、俺の外見か地位のことしか見てないんだよ」
凛がよく告白されることは知っていたが、どうやら彼のお眼鏡に叶うような人からはないらしい。
「付き合ってみたら案外いい人だったりするかもしれないぞ?」
「ないない。そもそも俺が欲しいのは彼女より友達なんだよな」
「それは深刻な悩みだな」
二子玉兄妹には是非とも俺以外の友人を作って欲しいと俺も常々思っている。
なんとなく悲しい雰囲気になったのを感じた凛は、話を切り替えようとする
「俺の話はいいんだよ。正樹は気になっている人とかでもいないのか?」
「まあそれもいないな」
「ふーん…なあ、鈴はどうだ?」
唐突に凛の口から俺たちに1番近い人間の名前があがったことに、驚く。
「鈴!?いや、あいつこそないだろ。俺が好きになることはあったとしても、逆は絶対ないだろうしな」
「やっぱり、お前の中ではそういう認識なんだな…」
「そういう認識ってどういうことだ?」
「いや、なんでもない。こっちの話だ…」
どうやら凛は何か言いたげだったが、最終的にやめたようだ。
時計を見ると針が1時近くを指しているのを確認した俺は凛に提案する。
「そろそろいい時間だし。本当に寝るとするか」
「あぁ、そうだな。おやすみ」
「おやすみ」
凛にあいさつをした後、瞼を閉じた俺はいつのまにか意識を手放していた。
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