四章 Sランク冒険者交流戦
第31話 Sランク冒険者交流戦
「Sランク冒険者交流戦?」
「ああ、そうだ」
《神の巣窟》を攻略した俺たちは、そのことを報告するために冒険者ギルドへとやって来たのだが……
「何で急に?」
「これには理由があってな」
とギルマスのおじさん。理由って何だ?
「Sランク冒険者は強いからSランクだろ?」
「そりゃそうだな」
「Sランク冒険者の数には限りがあるんだよ」
なるほど。……ん?限りがあるんだったら何で俺たちは急にSランクになれたんだ?
「この世にはSランク冒険者の数は30人と決まっている」
結構多いんだな。
「Sランク冒険者はギルドへの貢献度と依頼の達成数などで選ばれるんだが……お前たちの偉業の数々でSランク下位の4人を蹴落として、お前たちがSランク冒険者に選ばれたんだ」
……なるほど。たしかに俺たちは貴族の依頼やSランクの依頼をクリアしてきたからな。
「それで、俺たちにその大会に出ろと?」
「その通りだ」
俺の横に座っているミル、リーク、真理に視線を向ける。
今回はそのために呼び出されたのか。
もちろん、Sランク交流戦に出場させるためだろうが……。
「だが断る」
「なっ、何故だ!」
怒んなよジジイ。そんな図体で勢いよく立ち上がったら……天井突き破っただろうが。
「落ち着きなさい」
「し、失礼した」
ミル、おじさんが可哀想だからそんなに睨まないであげて。
でもね、でもね?
「そんなの面倒くさいじゃん!」
「知るか小僧!」
俺とおじさんが取っ組み合いの喧嘩を始める、が現在のレベルはおじさんの方が上なので、普通に吹き飛ばされた。
「ハッハッハッ!まだまだ若造だな!」
「五月蝿いですね」
と、俺を煽ってくるおじさんにリークがそう言った。急に女王様感出さないでほしい。
「ゴホンッ!……大会に優勝したら、景品として古代の魔導具が手に入るらしい」
クッ、欲しい!……いや落ち着け。俺には今度こそミルの妹を探し出して、神獣からもとの姿に戻すという使命がある。絶対に行くもんか。
「どうしてもと言うのなら……神獣の情報を渡さない」
「このクソジジイ!」
クソジジイに掴みかかった俺に対して、ミルは気にした様子もなく言った。
「だったらその交流戦に行けばいいじゃない」
「え、いいの?」
「神獣になってから何千年も経ってるのに、数日の誤差ぐらい気にしないわ」
そ、そうですか……。
俺は掴みかかっていたおじさんの方に首を回す。
「と、いうわけでSランク交流戦で優勝してやろうじゃないか」
「最初からそう言え!」
「だって俺たちがSランクになった理由って神獣の情報を閲覧するためじゃん!それ以外に理由ないし!」
ただ単にSランク冒険者になりたかったってのもあるが。
「まあいい。そんで、その大会はいつあるんだ?」
「明日だ」
「はい?」
「明日だ」
は?このクソジジイ何て言った?
「はあ?明日だと?バカにしてんのか!」
「お前たちがダンジョンを攻略するからだろう!調査隊って言うけどすぐに入口に入って終わりだと思ってたんだよ!なのに何で最初から攻略してんだよ!」
「あ、すいません」
「しかも!ダンジョンが消えたってどういうことことだ!王都のギルドに何て言えばいいんだよ!」
「それは俺も知らんわ!」
互いに荒い息を吐きながら視線を合わせる。
「とりあえず、大会には出場するんだな?」
「絶対に神獣の情報渡すならな」
「ああ、もちろんだ」
交渉成立!
「んじゃ、王都の冒険者ギルドに行けばいいんだな?」
「ああ。あと、隣の獣人族の王女様が拐われたらしい。軍も動いてるみたいだから、お前らもそれには気を付けろよ」
「分かった。それじゃあ、俺たちが優勝したっていう吉報を待ってな」
「1回戦で負けるんじゃねえぞ!」
その言葉に、俺は無言で手を振った。
俺、ミル、リーク、真理がギルドから出て町を歩いているときのこと。
「いるよ」
「分かってる」
真理の言葉に皆で視線を交わすと、他愛のない会話を始めた。
「ユウってあのおじいさんと仲良いわよね」
「ん、そう?」
「たしかに、あのおじいさんとはやけにフレンドリーに話していますね」
「気のせいだと思うけどなあ」
フレンドリーって言うよりかは、言い争ってたら遠慮がなくなったって感じだけど。
「まあ、強いて言うならテンプレっぽいおじさんだからな」
「「テンプレ?」」
あ、分からないか。
「ごめん。何でもない」
そんなどうでもいい会話をしながら町を歩いていく。
そのとき、後ろから殺気が放たれた。
俺は余裕を持って後ろからの攻撃を避けると、格好つけてバックステップを踏みながら後ろに下がる。
「お前、何者だ?」
「……お前たちが、このギルドのSランクパーティーか?」
「だったらどうするんだ?」
俺がそう言うと、彼は再び襲いかかってきた。
「俺はっ!お前たちのせいで!」
いきなりそう言い出すと、両手に持つ剣を振るいだした双剣使い。町中で暴れないでほしい。
俺は呼吸を崩さずにその攻撃を避け続け、一発だけそいつの顎に蹴りを入れた。
双剣使いは呻き声を上げながら宙に打ち上げられると、情けない姿で地面に転がった。
「これ、どうする?」
「放置でいいんじゃないかしら?」
「そうですね」
「……」
俺たちは周りの注目から逃げるようにしてその場を立ち去り、人がいなくなった場所で指輪の空間に移動した。
「あ、おにいちゃんたち!お帰りー!」
俺たちが戻ってくると、相変わらずダボダボな白衣を着て変な実験をしていた猫耳少女がこちらを向いた。
「ドーン!」
そう言って俺に飛び付いてくる猫耳少女をキャッチして、頭を撫でながら言う。
「王都行く?」
「行くー!」
俺は猫耳少女の頭を優しく撫で、3人に冷たい視線を向けられながら自分の部屋に戻った。
そういえばさっきのあいつ、誰?
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