第32話 健司と片瀬の比較
その千鶴さんは鹿能の心配を
学生時代は殆ど出席していないし、三回生までは国内を旅していた。主に離島や山深い山間部で、限界集落と謂う所には良く顔を出した。簡単な装備で行ける山は登った。それから祖父に呼び戻されるまでは、主に地の果てを
義祖父は片瀬さんを身内にしておけばベストだからこそ希未子さんに白羽の矢を立てた。それは良いけれど、希未子さんも健司と同様に、今まで自由にさせたらしい。だから希未子さんは特に会社への貢献度は考えてなかったから、それがここへ来て厄介になっているのよ。でもまあ鹿能さんはそんなの気にする必要はないと思うけれど。どう人生を生きようが、人様の迷惑にならない範囲なら自由に生きれば良い。それに今の処そんなしがらみに
とにかく健司は思いついたら
「更に希未子さんが言うには、二人は夢見て暮らす人と現実を見て暮らす人なそうだ。前者が健司ならば後者が片瀬さんなのでしょうか。でもあたしが
「覚めてはいないですッ。良い作品を創るために、むしろ熱く閉ざしているだけですよ」
「そうね、でも片瀬さんは冷たく閉ざしている、希未子さんはそこを見てるんですよ」
どう捉えているのか千鶴さんは言わなかった。私はそう言う影響を受けた人の元ではやっていけないと聞いたそうだ。それで
京都へ着くと、兄が片瀬の帰国を待って、昼食に誘っている。そこへ四人はタクシーで向かった。希未子と片瀬は渡航前の昔の状態に戻っているようだ。それは脆弱な愛と置き換えられるほどの、友情に似た付き合いだろう。今の処これ以上に彼女に近付けたのは鹿能だけだ。その余裕からか彼は少し片瀬とは距離を置けた。
タクシーは鴨川沿いの料亭に着いた。此処は夏ならば鴨川に納涼床を出しているが、冬はガラス戸から鴨川が眺めてられた。
四人は二階の奥座敷に招かれた。そこには健司と父の総一郎が来るはずだったが、急遽紀子さんがやって来た。
八畳ほどの和室に座布団が六つ置かれている。着席した座布団の前にはさっそくに会席一人膳に載った懐石料理が各自の前には運ばれる。
なぜ此処に鹿能も同席しているのか、それは希未子によって当家と縁があると印象付ける狙いがある。それと昼食には片瀬が辞退したが、ひと区切り付けたいと総一郎が用意したらしい。社長に同席されるほどの者じゃないと、固辞して社長は取りやめた。だが懐石料理が一人分余り、
これで社長の思惑通り堅苦しさがなくなっている。紀子さんは、社長はともかくおばあちゃんの世話を奥様に任せて来たのがどうも心残りのようだ。これには健司夫妻が、気にするな元々親父が余計な事をしたからだ。俺はどこかの居酒屋の座敷でも誘うつもりが、選りに選って鴨川にある
紀子さんの隣が健司夫妻で、向かい側の真ん中が希未子さんで、両隣が片瀬と鹿能になっている。真ん中の千鶴さんとまあ前の希未子さんが、そうよ遠慮することはないわよこれも滅多に無い仕事の内よ、と声を掛けられていた。これには健司も大笑いして、向かいに居る片瀬に久しぶりに畳で食べるのも良いだろう、と笑いを誘っている。これに片瀬も応えるように苦笑していた。
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