第九話 『放課後とらぶる 1』
皆さんは帰宅途中、もしくは帰宅する際に起こるトラブルと聞いて何を思い浮かべますか?
忘れ物。これはよくあるよね。
突然の雨。これも、たまにあるよね。
そして今現在。
下校しようと玄関口に移動して。
外は...
「……マジかよ」
そう、降水確率30%の予報は見事に外れて、外は視界が遮られるほどの大雨が降っていた。
少なくとも傘を刺さねばびしょ濡れになるぐらいは降っていて、とてもでは無いが走って帰れる雨ではない。
「クッソ、天気予報なんて信じた俺が馬鹿だったか...いや、そもそも忘れてきてる時点でアウトだな」
そして俺は今日に限っていつもは常備している折りたたみ傘を忘れて来てしまっていた。
それは登校中に気付いたのだか、雨は降らないだろうとそのままにしてしまったのだ。
「母さん達に迎えは頼めず、最寄りのコンビニまでどう頑張っても5分はかかる...あれ、詰んでね?」
現状を打開するための方法を必死に考えていると、
「どうしたんですか葉山さん?」
「えっ」
デデドンッ!
たかせさんがあらわれた!
はなす
だまる
にげる◁
「あ、その、さような」
「待ってください!この雨で傘もささずにどこ行くんですか!」
にげれない!
はなす
だまる◁
にげる
「.....」
「どうしたんですか?」
「.....」
「...何か喋ってくれませんか?」
「あ、はい」
.
だまれない!
はなす◁
だまる
にげる
「えーと、その...」
はやまはこみゅしょうのためうまくはなせない!
「?...ああ!なるほど」
?何がなるほどなのだろうか。
ていうか俺殆ど喋ってないんだが...
「ええーとつまり、葉山さんは今日傘を忘れてきてしまったんですね。この雨では、走って帰るのも難しいでしょうし」
「.....」
「そして最寄りのコンビニは基本すぐ行ける距離ではないので買うという手段が取れないと。そうなるともう八方塞がりですね...あ、だから最初途方に暮れていたんですね」
「...そうです」
...うん。もう驚かない。
俺の思考というか考えていた事全て読み切っていることになんて驚かない。
「となるとやっぱり...」
「やっぱり?」
「葉山さんが安全に帰る方法を考えていたんですが、やっぱり相合傘しかないかな、と」
「はぁ、相合傘」
ふーん、相合傘ね。
.........相合傘?!?!?!?
「?!?!?!」
「あ、いえ!ずっと相合傘をする訳ではなく、とりあえず最寄りのコンビニまで一緒にという訳でして...」
あぁ、なるほ...ってそれでもダメでしょ!?
「どうでしょうか?」
「い、いや、そ」
「どうでしょうか?」
「は、はい...」
これは仕方ない事なんですよ...
だって俺に断れるわけないもん!
はぁ...きっついな
「雨、止みそうにないですね」
「...」
「あ、葉山さんもっと近づいて下さい。濡れちゃいますよ?」
「は、はい...」
うんうん。
濡れちゃうから近づかな...って無理でーーーーーーすっっ!!!
くそっ!だがもう少しの辛抱だ。
もうコンビニは目と鼻の先。これでこの状況から...
「?どうでしました葉山さん...その顔は」
「...売り切れてました、傘」
「あー、それは...」
「どうしましょうか...これ」
「ふむ、仕方ありませんね。このまま私が送っていきましょう!」
「...」
ですよねー。絶対そういうと思いましたよ。
はぁ~...優しさがつらい。すげーありがたいんだけど、俺のメンタルが持たんわこれ。
どうやら今日は、まだ終わってくれないらしい。
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