わからないぬ
仲仁へび(旧:離久)
第1話
その犬は混乱していた。
分からない。
分からないでござる。
犬は獣だ。
だから、迷子になっても本能で帰るべき家を見つける事が出来る。
けれど、すべての犬がそうであるとは限らない。
その犬は、散歩の途中で飼い主から逃げ出した後、数時間自由を謳歌していた。
が、いざ帰ろうと思った時、家が分からない事に気が付いたのだ。
分からない。
分からないでござる。
拙者、お家に帰れないでござる。
犬は激しく混乱していた。
その犬は、野生の犬ではない。
生まれた時から人の手によって育てられてきた。
だから、外で生きられるとはまったく思えなかった。
外には危険がたくさんでござる。
じことか、ゆうかいとかにあったらダイヘンでござる。
犬はすごく困って道行く人に片っ端から助けを求めた。
しかし怖がる人達ばかりで、問題は解決しない。
このままだとおっかないほけんじょ、とかいう場所につれていかれるかもしれない。
ほけんじょやいやでござる!
犬は知っていた。
それは飼い主がテレビを見ながら眠ってしまった時の事だ。
テレビでほけんじょなる建物の事が特集されていたのだ。
だから、ほけんじょにつれていかれた犬のまつろを知っていた。
だれかたすけてーでござる!
わんわん、きゃんきゃん。
何度も吠え続けていた犬は、幸いだった。
「あれ、もしかして○○さんちの○○くん?」
家に何度もやってくるおばさんに出会う事ができた。
「もしかして逃げ出しちゃったのかしら。おいでおいで。おばさんがお家につれていってあげるわよ」
「わぅぅぅん!」
犬は感激して、涙目になった。
実際どうなったか分からないが、このまま彷徨い続ければ苦労した事は確実。
家に帰るあてができて良かったと、酷く安堵していた。
それからその犬はすう十分後、見慣れた我が家に帰る事ができた。
ちょっと怖い思いをした犬は、大好きな散歩のときも当分大人しく歩くだけだったそうだ。
わからないぬ 仲仁へび(旧:離久) @howaito3032
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