違和感のある人物

仲仁へび(旧:離久)

第1話



 温泉の脱衣所で服を脱ごうとしたとき、私は何かに違和感を感じた。


 おかしい。


 確かに何かがおかしい。


 けれど、それをはっきり形にする事ができない。


 首をひねって、考えてみるが、特に変な事は見つからない。


 脱衣所にはほかに一人の女性客がいるだけだ。


 景色にもおかしい所はない。


 きちんと清掃されていて、清潔な室内だった。


 私は気のせいだったか、と思いながら服を脱ごうとした。


 しかし、その瞬間なぜか嫌な予感を感じた。


 なぜか強く、服を脱いではいけない、とそう思ったのだ。


 慌てて周囲をきょろきょろ、視線を向けてみるが、もう一人の女性はこちらを見ていなかった。


 ただ歩いて、室内に落ちていたゴミを拾ってゴミ箱に捨てただけだ。


 なんだろう?


 もやもやとした気持ちを抱えていた私は、あちこち視線を向けているうちに気が付いた


 脱衣所にいるもう一人の女性客。


 その女性が、ゴミ箱に足をぶつけた時の声の違和感に。


 私はあわてて脱衣所を出て、お店の人に伝えた。


「男の人が女装して入ってきてるかもしれません」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

違和感のある人物 仲仁へび(旧:離久) @howaito3032

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ