第十八話 大戦士カミーラ
封印された聖剣を引き抜いたカミーラは、謎の思念体に勇敢に立ち向かう。
「ほわわわ~! よくも姉上を~、許せませ~ん!」
カミーラは目にも止まらぬ速さで、思念体に飛びかかり、剣を振り回した。
シュババババッババババババッバババババババ!
カミーラの動きは鋭かった。シンシアの聖域バフにより強化されているのだろうか。
彼女の剣技は、千を超える無数の斬撃となって思念体を切り刻んだ!
「この村は……アタシが守るのですうぅ!」
赤髪を振り乱し剣を振り回す彼女の姿は、戦士そのものだった。
思念体はだんだん細切れになっていき、力を失っていくのがわかる。
「す、すごい! 実体の無いあのモンスターを斬っている! やはりあの思念体を攻撃できるのは聖剣だけだったんだ」
僕が驚いてそう言っているうちに、勝負はついてしまった。
粉々に切り刻まれた思念体は、残すところ頭部のみとなった。そして、
「悪い魔物は……またオネンネしてくださ~い!」
ズバシュッ!
カミーラの会心の一太刀によって頭部も完全に破壊された。
こうして、封印されし未知なるモンスターとの戦いはあっけなく終わった。
「終わった……すごいやカミーラ! 大活躍だ!」
「ほわわ! アタシ、アタシがやったのですか……?」
夢中で剣を振り回していたカミーラは、急に我に返ったようにキョロキョロと辺りを見回している。
そんなカミーラに村長が駆け寄り、声をかける。
「カミーラ! よくやったぞ! さすがマウリの里の戦士! いや、さすがワタシの妹だ」
「ううううぅ、姉上~!」
緊張の糸が切れたのか、カミーラは泣きながら村長の胸に飛び込んだ。本当は怖かったんだろうが、彼女なりに勇気を出して戦ったのだろう。
僕はシンシアに駆け寄って声をかけた。
「シンシア、お疲れさま。今回は少し危なかったね。助かったよ」
「ラルクさん、ケガはないですか?」
「大丈夫だよ。それにしてもカミーラがいてくれてよかった。彼女に強化バフをかけてくれたおかげでなんとか倒すことができたね」
「そうですね。でも……最後にあの魔物と戦ったのは聖域の外でしたよ」
「え、あれっ、そういえばそうだよね」
「聖剣を抜いたのは、わたしのバフによる強化があってだと思いますが、魔物を倒したのは彼女自身の強さと聖剣の効果によるものだと思います」
「ええええぇぇ! ってことは、あの目にもとまらぬ速さの斬撃は、彼女の素の力ってこと?」
「そういう……ことになりますよね。すごい戦士だったんですね。カミーラさん」
「あれはまさに神速の剣技だったよ。いやあ、とんでもない強さだ」
村長とカミーラが、僕たちに近寄って声をかけてきた。
「二人とも、礼を言うぞ。オマエたちがいなかったら、あの魔物を倒すことはできなかったろう。オトコよ、勇敢にも魔物をおびき寄せたそなたの勇気に感服する。そして、そっちの娘。オマエの聖域の効果でカミーラが聖剣を引き抜くことができたのだろう。本当に感謝する」
「ううううぅ、オトコ。シンシア、村のために、共に戦ってくれてありがとうなのですぅ、感謝いたしますぅ」
「カミーラ、僕はオトコじゃなくてラルク!」
「ラ、ラ、ラルク。あ、ありがとぅ……」
カミーラは男と喋り慣れてないからか、かなり照れているようだ。
「カミーラ、君は本当にすごい戦士だよ。いや、偉大なる『大戦士』だ!」
「ううううぅ……大戦士……ですか。恥ずかしいですううぅ!」
カミーラは顔を真っ赤にして、村長の後ろに隠れてしまった。
「「「アハハハハ」」」
そんなカミーラを見て、僕たちは全員で笑っていた。
そして、そんな僕たちを見つめる邪悪な気配には、この時はまだ気付いていなかった。
その後に予期せぬことが起こることを、この時の僕たちはまだ予測できなかったのである。
──────────────────────
あとがき
読んでいただきありがとうございました。
あなたのご意見、ご感想をお待ちしております。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます